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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「そもそも家出か何かだと思う? チョロ松」
「多分。てかそれしかないでしょ。警察に連絡した方がいいんじゃないの?
 もしかすると捜索願いとか出てるかも」

 誓ってもいいが、そんなものは出ていない。

「必要ないさ。俺には分かっている。あの子は俺たちの家族だ」

 カラ松さんが流れを切る。トド松さんが呆れたように、
「いやだからさ。カラ松兄さん。下心を出してる場合じゃないよ。
 あの子が家族じゃ無いって証拠は山ほど――」

 グラスがドン!と置かれる音。

「過去は関係ない! あの子は身一つで俺たちを頼ってきたんだ!!
 なら守ってやるのが男ってもんだろうっ!!」

 沈黙。

 えと、カラ松さん。

 もしかして最初から私が怪しいと承知の上で……?

「だまされてやろうぜ、男なら」

 サングラスをクイッとあげ、ウィスキーを飲む仕草が見えるようだ。

「いや、俺たちだけなら別にそれでもいいけどさ、父さんと母さんはどうなんだよ」

 チョロ松さんがすぐ冷静なツッコミを入れる。頭の良いトド松さんも、
「最初はトト子ちゃんの家に行こうとしてたんだし、お金目当てってことなんでしょ?
 あの子がうちのなけなしのお金を盗っていったら、僕たちの生活がヤバくなるんだよ?」

 ……親じゃ無く、自分たちの心配かよ。チョロ松さんがさらに続けて、

「仮に納得出来る事情があったとしても、情で無責任に泊めてるより、警察か役所が介入した方があの子の将来のためだと思うな」

 まあ普通の虐待や家出物件ならそれが正しいんだけど。
 まさか別の世界から来た~とかいう状況は、彼らにも想定外だろう。

 私もそうした方がいいんだろうか。
 他人の家でびくびくしながら過ごすより、保護施設か何かで孤独に過ごす方がいいだろうか。
 その方が迷惑もかからない。
 そうしよう。皆さんに謝って、ちゃんと出て行こう。
 そう決めて立ち上がろうとした。

「十四松はどう思う?」
「僕はあの子にいてほしい!」

 立ち上がろうとして止められた。
 誰かが私の手を押さえていた。

「おまえは相変わらず気楽だな。いちおう聞いておくけど、何で?」

 一松さんが、私の手を押さえ、強く握りしめる。

「だって! あの子が来てから、一松兄さんがすっごく楽しそうだからっ!!」

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