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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



 やはりこっち方面の話題は不味いらしく、一松さんが不機嫌オーラを出してくる。
 どんな話題を振ったものかと焦っていると、ガラッと扉が開く音がする。
 ドヤドヤと客が入ってきた。

「今日は空いてるなー」
「おっちゃーん。とりあえず人数分、生ねー!」

 その声に一松さんがぴくっと反応する。
 私も分かった。おそ松さんたちだ。
 私たちは仕切りのこっち側にいるから、向こうからは見えない。
 
 椅子を引いて席に座る音。ジョッキが人数分置かれる音。
「あーあ、働くと疲れるよー」
 今日はパチンコじゃないんだろうか。
「まずかんぱーい!」
『かんぱーい!』
 一松さんはどうしようかと、迷う目だった。なぜか動揺している風にも見える。
 私はほとんど食べ終わったし、一松さんはあちらに合流する方がいいのでは?
 迷ってる風な一松さんに声をかけようとすると、おそ松さんの声がした。

「デカパン博士の研究所から前のことは分からないか」

 私の動きが止まる。呼吸まで止まりそうになる。
 お、落ち着け。私のことだとは限らな――。

「検索をかけたけど、履歴書に書いてあった学校も全部デタラメだったよ」

 トド松さんの声。もう間違いない。私のことだ。
 身体が震え、全身から血の気が引いていく。
 続いてチョロ松さんが、

「イヤミが会ったみたい。どうも最初はトト子ちゃんの家に行くつもりだったみたいだよ。お金があるからって」

 一松さんが、私をじっと見ていた。

 時間よ止まれと切に願うのに、おそ松さんの声が無情に続く。

「あの子、やっぱりうちとは何の関係もない子だよな」


 ついにバレてしまった、というのが最初の思いだった。
 けど来るべきものが来たという安堵感もどこかにあった。
 だって赤の他人の自分が、自称妹として数日過ごせただけでも奇跡だったのだ。

 でもこの後はどうすべき?

 私のそばには一松さんがいるし、逃げることも出来ない。
 その彼はというと珍しく目を見開き、真っ青な私と、仕切りの向こうを何度も見、次の対応を決めかねているようだった。
 
「で、どうするのおそ松兄さん」

 と末っ子トド松さんの声。おそ松さんがビールを仰ぐ音。

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