• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら




 自然に私と一松さんが隣り合って並び、一松さんは私の手をギュッと握る。
 それが当たり前のような雰囲気で、引き離されることも、冷やかされることもなかった。

 楽しい思い出は前日に語り合ってしまったので、七人いながら、全員が無言だった。

 そしてついにデカパン博士の研究所に来た。
 博士と変態メイドな助手は、入り口で待っていた。

「準備は?」
 私から手を離し、一松さんが問う。

「どっちも全て完了だス!」
 親指を上げる博士。
 
『どっちも』?

 ちょっと引っかかったけど、案内されるまま中に入った。
 研究所はすっかりきれいになっていて、割れた窓ガラスや板で補強した場所も、新品になっていた。

「本当に忘れ物はないね?」「体調は万全だな?」「松奈、元気でね!」
 と話しかけられながら、長い長い真っ白な廊下を歩いた。

 そして、次元転送装置の部屋についた。
 SFっぽい大がかりな装置は、電源が入れられ、パワー充填。
『転送準備完了』と液晶画面に悲しい表示がされていた。

 とうとう、このときが来たんだ。
 私はギュッとカバンのヒモを握りしめる。
 足が震える。今、何か声をかけられたら、泣いちゃいそう。

「あの、お兄さんたち、ほ、本当に、あ、ありがとう、ございました」

 うつむきながら言うのが精一杯。
 あ、あれ? 一松さん、どこに行っちゃったんだろう。姿が見えない。
 最後のときまで見ていたいのに。

「じゃあ転送するから、装置の中に入るだス」

 でも博士に促され、涙を流さないよう、目をパチパチさせ、ゆっくりと――。

「待って、松奈」

 声がした。

 振り向くと、一松さんが転送室に入ってきた。


/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp