第3章 三ヶ月目のさよなら
明日のこの時間、私は元の世界に戻り、自分の部屋にいる。
そして全てが楽しい夢だったと、泣いて後悔してるんだろう。
……泣いて後悔するって何だ。
家に帰るんだから、もっと楽しい気持ちになっているはず。
でもなぜか涙があふれて止まらない。
私はみっともなく泣いて泣いて、いつの間にか子供みたいに寝てしまった。
…………
…………
「固い~固すぎる~っ!! ソー・ハード!!」
「松奈、本当に背骨と内蔵に悪影響が出るから、起きてっ!!」
意味不明なことを言われ、カラ松さんとチョロ松さんに起こされたのだった。
…………
お別れパーティーには、松野家の全員が集まっていた。
お酒はNGなので、ジュースをつがれ、ケーキを勧められ、激励の言葉を贈られ、私はとても照れくさかった。
一松さんは終始無言。すみっこでジュースをチビチビ飲んでいた。
そのうちに、なんとなく雰囲気で、私は咳払いして立ち上がる。
「えー、ではセンエツながら、あいさつをさせていただきます」
ノリのいい皆さんは拍手と口笛。
「私松奈、この松野家に三ヶ月、滞在させていただき、頼もしいお父様と優しいお母様に見守られ、楽しい時を過ごさせていただきました。
特に六人のお兄さんたちには昼間から遊んでいただき、飲んだくれの介抱をしばしばさせられ、飲み代のツケを肩代わりさせられ――……。
働け、ニートどもぉっ!!」
私の名演説は六つ子の無言と、お父様とお母様の盛大な拍手で受け入れられたのであった。
食べるものも食べ終えると、あとはしんみりした雰囲気になった。
終わってほしくないんだけど、終わらないといけない、みたいな。
ついに私が、
「じゃあ、明日は早いのでそろそろ――皆さん、本当にありがとうございました」
と頭を下げ、拍手で終わったのだった。
一松さんはついに何もしゃべらないままだった。
…………
そのまま流れで、六人分の布団に七人が寝ることになった。
「消すよー」
と、部屋の電気が消される。
眠れないなあ……。
昼まで寝てたってこともあるんだろうけど。
皆の寝息が聞こえはじめても、私はもぞもぞと身体を動かしていた。
「…………」
手を握られる。誰の手かはもちろん分かる。