第3章 三ヶ月目のさよなら
「ん……ん……」
「松奈……今日は泊まろ。母さんには皆が適当に言い訳してくれるから」
私は顔を少し赤くし、うなずいた。
明日の夜は松野家で過ごすし、その次の日は帰る日だ。
多分、これが『最後』になる。
私は肩を抱かれ、歩き出した。
『これが最後』とついていったのを、数時間後には後悔していた。
甘い夜を期待していたのだけど。その実……。
「い、一松さん、もうダ、メ……無理……身体が……あと、眠……」
「は? まだこれからだよ。試してないこと、たくさんあるんだし。
道具ももっと使ってみたかったな。とりあえず次は電マ行ってみようか」
「いや、とりあえず次はって……や……ちょっと、押し当てないで……やぁっ……!」
「何で縄がないんだろうね……まあ、他のもので代用出来るから良いか」
「いや、良いワケないでしょう! ちょっ、動かさないで、やっ……」
「口では嫌がってるけど、身体は正直だよね。ほら、ここなんて、もうこんなに……」
「だから、そういう物言いは……や……あ……ああ――っ!……」
限界を試されまくった末に、夜明け前となった。
一松さんの腕の中でやっと眠りにつけたのであったが……。
あれだけ色々とやらかして、アザの一つもつけなかった手腕が逆に恐ろしい。
起きがけに一回やったとき『まだやりたいことがあったのに』と名残惜しそうにボソッと呟いたのがもっと怖い。
一松さんの闇は十分見たと思ったけど、彼の引き出しはまだまだ奥が深いようだ。
知らなくて良かったような残念だったような……。
疲れ切って、チェックアウト寸前で一松さんに起こされ、ヨロヨロでホテルを出た。
…………
…………
帰ったとき、皆、昼食を囲んでいるところだった。
朝(昼)帰りの私たちは特に追及らしい追及を受けなかった。
皆、無言で席をずらして、私たちの座る場所を作ってくれた。
その日の午後は、ひたすらに片付け三昧である。
一階ではお母様がお料理を作ったり、お寿司を注文したり、お酒が運ばれてきたりとバタバタしていた。
一松さんとは、あまりお話する機会がなかった。
というか一松さんはずっと出かけていた。
部屋にいると、お母様が入ってこられた。
「松奈、片付けは終わった?」