第3章 三ヶ月目のさよなら
結局、今話題の適当な映画を、皆で半分寝ながら見終わった。
その頃には程よく夕食の時間帯になっていた。
映画館から出た私たちは、すぐに焼肉店に直行。
しかし成人男性が六人もいるものだから、肉もモノすごい量になった。
お皿が次々に追加され、あっという間に無くなるのを見ながら、私は『男の人ってすごいなあ』と肉を焼き焼き、ダウナーな一松さんに取り分けた。
そのうちにお酒も入り、たちまち酔っ払い集団が出来上がった。
「松奈~、帰らないでずっとうちにいなよ~」
「そうだよ。お兄ちゃんたち寂しいよ~」
おそ松さんとチョロ松さんには超からまれた。酒臭ぇ。
「帰りたい意思に変わりはないんだな?
……そうだな。温かい家族が待っているんだったな。でもこっちは静かになるよ」
と静かにカラ松さん。
いや、松野家は私がいようといまいと、絶対に静かにならんでしょ。
「松奈~!! 見てみて~!!」
脱ぐな、十四松さん。女性相手に裸踊りは単なるセクハラですからね!?
「『主演俳優の吹き替えが棒すぎて、終始真顔。ラスト超展開www 席もガラガラ、完全に大ゴケ確定www』……」
ダークサイドに落ちないで下さい、トド松さん。
そして、さらにお酒が進み、皆がぐーすか寝始めたところで。
「行こう」
一松さんが私を引っ張って立たせた。
「え。でも皆は……」
「店の人が勝手に起こすよ。あとはてんでバラバラに帰るから」
「私たち二人だけ抜けたら、皆が心配するんじゃ……」
少し前まで、見張られてたくらいだし。
「多分、もうそんな心配はしてないよ」
「え?」
「出るよ」
店から出ると、すっかり夜だった。
「うう。服に焼き肉とお酒の匂いが……」
服をくんくん嗅いで、顔をしかめた。一松さんはニヤッと、
「じゃあ、脱ぐ?」
飲んだくれが。
「馬鹿なことを言わないで下さい。ほら、行きますよ」
一松さんの手を引き、海沿いの大きめの公園を歩いて行く。
人の気配もなく、波音が耳に心地良い。
私は一松さんの腕を抱き、寄り添って歩く。
一松さんが立ち止まり、私も顔を上げ――キスをする。
一回始めると、止まらない。
周囲に人がいないのを良いことに、抱きしめあい、舌を絡め、互いの身体に触れる。