第3章 三ヶ月目のさよなら
三百万円の調達が終わり、研究所の片付けも終わった。
その後の二日は、それまでと比べあっという間に過ぎ去った。
まず次の日。
クソ兄どもに絡まれつつ、部屋で片付けをしていたら、お母様がいらした。
諭吉さんを×枚、ポンと長男に渡して言うことには。
「ニート達。このお金で松奈を遊びに連れて行ってあげなさい」
「え? お母さん、私はそんなお気遣い、別に――!」
『イヤッホォーっ!!』
どこぞの世紀末モヒカンかという勢いで歓声を上げる五名。
おそ松さんが諭吉さんを握りしめ、
「よーし! 今日はこの金でとことん遊ぶぞっ!!」
『おーっ!!』
「いえ、あの、私は片付けが……」
「行くぞ、松奈ー!!」
「いやあーっ!!」
抵抗したが、五人がかりで拉致された。
あと一松さんは陰鬱な顔で、後からノソノソとついてきた。
ついた先は、平日の真っ昼間でガラガラな遊園地である。
同じ顔同じ服の成人六人+似てない顔の少女一人という人目を惹くしかないメンツで、スタッフさんの注目を浴びつつ遊び回った。
一松さんは終始ローテンション。ただし乗り物に乗るときは他の兄弟に暴力をふるってでも、私の隣を譲ろうとしなかった。
「次はあれに乗ろうぜっ!!」
走り回ってさんざん笑って楽しんで。ただし人が少ないせいで、アトラクションは早めに回り終えてしまった。
遊園地の出口を出たけど、帰るにはまだ早い時刻だった。
「よし、遊園地の次は映画だ! 松奈、何が観たい!?」
このお祭り長男が。ちょっと疲れましたよ。でも映画かあ。
「うーん。特に好みはないですけど、チェーンソーとナタとノコギリは有るにこしたことはないですね。
ゾンビはかろうじてOKですが、クリーチャー系って、よほど脚本が良くない限り(中略)まあ低予算ホラーでも最近は良いものも(中略)、しかし臓器や血しぶきが一目で作り物と分かるB級は(中略)。もちろん、肝心の『恐怖』を満喫させてくれるのなら(中略)とはいえ私から言わせますと初代ゾンビを超える作品は未だに――」
しーん。
皆さん、沈黙されておる。何故!?
「……松奈。映画を見たら、ネットで片っ端から辛口感想を書きまくるタイプでしょ?」
トド松さん、なぜ分かったんですか!?