• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら




「松奈……苦しい……大丈夫だから……俺、ここに、いるから……」


 遠くで誰かが呼んでる。でも私は必死で腕の中のぬくもりにしがみついた。

「一松に抱き枕をさせたら違うかなと思ったけど、逆効果だったね」
 チョロ松さんの声が聞こえた気がする。

「丸まってるより背骨にいいと思うけど」とおそ松さん。
「いや……俺の背骨の、方が……は、離すの、手伝っ……」
「むしろ一松兄さんがいるから、ひどくなったんだと思うよ? 一松兄さんが帰ってくる前もひどかったけど、さすがに人の背骨をぶち折るレベルじゃなかったよね」

「じ、十四松……おまえ、まで……」
「心の傷から生まれた無意識の殺意ってやつ? 殺されとけよ、自業自得松」

「ありえるかもね。一松の殺意を予期してるから、懸念材料を排除しとこうって、感じで」
「ずいぶんとアクティブな心の傷だなあ」
「一松兄さんも松奈もいったいよねー!」

 ワイワイガヤガヤと無責任な雑談。
 私はただ、暖かさにすがりつく。

「いや、おまえら、ホントに、たすけろ……マジで、し……ぬ……」

「殺されても一松兄さんの自業自得でしょ~? 松奈をこんなにひどくしといて~」
 
 一松さん、一松さん、一松さん……。

「な、なあ、みんな……」

 そのとき、ソファの方からためらいがちな声がした。

「ンだよクソ松。てめえに、だけは助けて、ほしくなんか……」

 一松さんは苦しそうながら、いらっとした声。
 
「いや。そうじゃないんだ。ずっと見ていたんだが」

 そこで一呼吸が置かれ、


「松奈は、もしかして――」


/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp