第3章 三ヶ月目のさよなら
「松奈……苦しい……大丈夫だから……俺、ここに、いるから……」
遠くで誰かが呼んでる。でも私は必死で腕の中のぬくもりにしがみついた。
「一松に抱き枕をさせたら違うかなと思ったけど、逆効果だったね」
チョロ松さんの声が聞こえた気がする。
「丸まってるより背骨にいいと思うけど」とおそ松さん。
「いや……俺の背骨の、方が……は、離すの、手伝っ……」
「むしろ一松兄さんがいるから、ひどくなったんだと思うよ? 一松兄さんが帰ってくる前もひどかったけど、さすがに人の背骨をぶち折るレベルじゃなかったよね」
「じ、十四松……おまえ、まで……」
「心の傷から生まれた無意識の殺意ってやつ? 殺されとけよ、自業自得松」
「ありえるかもね。一松の殺意を予期してるから、懸念材料を排除しとこうって、感じで」
「ずいぶんとアクティブな心の傷だなあ」
「一松兄さんも松奈もいったいよねー!」
ワイワイガヤガヤと無責任な雑談。
私はただ、暖かさにすがりつく。
「いや、おまえら、ホントに、たすけろ……マジで、し……ぬ……」
「殺されても一松兄さんの自業自得でしょ~? 松奈をこんなにひどくしといて~」
一松さん、一松さん、一松さん……。
「な、なあ、みんな……」
そのとき、ソファの方からためらいがちな声がした。
「ンだよクソ松。てめえに、だけは助けて、ほしくなんか……」
一松さんは苦しそうながら、いらっとした声。
「いや。そうじゃないんだ。ずっと見ていたんだが」
そこで一呼吸が置かれ、
「松奈は、もしかして――」