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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



 さらに商店街ではトト子さんに会った。

「松奈ちゃーんっ!!」
「……ゲッ!!」
 逃げようとしたが、猛然と走ってきた彼女に、両手をガシッと握られた。

「松奈ちゃん、久しぶりー! ライブに来てくれなくて寂しかったのよ!!」
「すすすすすみません……」
「ご、ごめんね、トト子ちゃん。すごく行きたかったんだけど、用事があって。次は皆と必ず行くから」

 対照的に、一松さんは顔を赤くし、鼻の下を伸ばしている。

「うん! お願いね、一松君! それじゃこれ、チケットと物販の優先券、あと新作グッズの割引券も持って行ってねー!!」

 ……いるのか、参加者一桁のライブに物販列の優先券なんぞ。

「ありがとう、トト子ちゃん。必ず行くからね!」
 トト子さんに手を握られ、一松はデレデレ。
 ……あ、そうじゃない。トト子さんにもお別れを言わないと。

「あのトト子さん……」
「松奈ちゃん! 来てくれないと、トト子すねちゃうんだから!」

 全力の笑顔で私の頭をなでなでなで。

 ふと思った。この人の家に行って、この人がお姉さんでも、きっと私は幸せな三ヶ月を送ったんだろうな。

 そしてトト子さんを通して六つ子のお兄さんたちと知り合って、一松さんと――。

「じゃあねー!! 次のライブで会おうねー!!」
『じゃあねー!』

 ヤバい。一緒に手を振ってしまった。
 そして一松さんが我に返ったように、

「松奈、怒ってる?」
「……あ?」
「っ!!」
 一松さんの頭にビクッと、猫耳が見えた気がした。


「だから、トト子ちゃんは幼なじみだし、恋愛対象というか憧れに近くて――」
 一松さんは私の後をついてくる。
「怒ってませんよ? 怒ってませんからね?」
「せっかく夢の職業についたのに、世間から評価してもらえない可哀想な子なんだ。幼なじみの俺たちが支えてあげないと――」
 しまらない人だなあ。
 ベッドではあんなに格好良いのに……。
「ご、ゴホンっ!!」
 猛烈に恥ずかしくなり、背を向ける。
「どうしたの、松奈? 急に赤くなって」
「い、いえ別に」
 一松さんはツツツと寄ってきて、耳元でボソボソと、

「何か思い出してたの? ねえ、俺に何かしてほしいの? ねえねえねえ」

「しつこいわっ!! あとテンション変わるの早っ!!」

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