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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



「社長、お金貸して下さい! 無期限無利息で!! あとお久しぶりです!!」
「あいさつより先に借金の申し込みザンスか! 相変わらず六つ子の妹はろくでもないザンスね!!」

「ご挨拶したかったのは山々だったんですが、私の美貌に陥落した変質者に拉致監禁されて心身に多大な傷を受けておりまして!!」
「それは大変だったザンスねえ! ミルクをやるからとっとと帰れザンス!!」

「反応薄っ! いっただきまーす!!」

「何の会話してるんだ、おまえら」

 一松さんは呆れ顔。

「このミルク、濃厚で美味しいですよ!? 飲んでみますか!?」
「いいよ。俺があとでもっと美味しいのを飲ませてあげるから」

 白昼堂々、下ネタを披露すんじゃねえ!!
 幸い、イヤミ社長には聞こえてなかったよう。

「で、妹を連れて何の用ザンスか、チョロ松!」
「一松。頼んだ仕事、終わった?」
「…………」
 イヤミ社長は急に無言になり、グラスをそっと棚に戻すと、
「待つザンス」
 と言って、奥から何かを持ってきた。小さな封筒だ。
 カウンターの上に滑らせると、一松さんがスッとポケットの中に突っ込む。

「終わったらとっとと帰るザンスよ!」
「ご苦労さん。またよろしく」
 イヤミ社長はグラスを拭く作業に戻りながら、

「チミじゃなくて、その子のためザンスよ。他の世界から来て苦労してるみたいザンスからね」

「…………」

 私は目をパチクリさせ、イヤミ社長を見る。

 一松さん、私が別の世界から来たってバラしたの?
 でも一松さんが答えるより先に、

「ンなことくらい、ミーにも分かるザンスよ」
 やっぱり、この世界は元の世界と似ているようで違うらしい。

「ありがとうございます、イヤミさん」
 あ、そうだ。お別れだと言っとかないと。
「あの、イヤミさ――」
「何か困ったことがあったら来るザンス、仕事を回してやってもいいザンスよ」
 イヤミさんはプイッと視線をそらしたのだった。

「行こう、松奈」
 私は一松さんに手を引っ張られ、地下のバーを出た。

「いい人ですね」
「女の子に弱いだけ。松奈のことは気に入ってるみたいだし」
「ふーん。で、何を受け取ったんです?」

 興味しんしんで、一松さんの持ってる封筒を見る。

「これ」

「……え?」
 
 声が止まる。

「……運転免許証?」

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