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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



「じゃあ、松奈だってやっぱりここにいた方がいいじゃない。
 松奈だってクズな子だし、俺と一緒にいた方がいい」

「一松さん。年上なのに駄々っ子なことを仰らないで下さい。
 ご兄弟と一緒にニートをして、私もいて、なんて無理ですよ」

「無理じゃない! 俺たちは一緒にいられる!」
 言葉を切って、うつむき、言った。

「……松奈がこの世界にいてくれるのなら、俺、働いてもいいよ」

 いや『世界を犠牲にしてもいい』的な悲壮感で就職宣言するなや。

 どれだけ働くのが嫌なの。

「一松さん。そういうのより、もっと嬉しいことがあります」
「何?」
「残りのあと何日か、ずっと一緒にいてくれることです」
「え?」

「私は一松さんがいてくれたから、違う世界に来て幸せだったんです。
 だから皆が何と言おうと、残りの日を一松さんが一緒にいてくれることが幸せなんです」

「……何で、俺みたいなクズといて幸せなの。監禁されておかしくなった?
 ちょっと馬鹿すぎて、ありえないんですけど……」

 一松さんの声が震えていた。

「……っ!」
 一松さんにキスをして、そっとコンクリートの上に押し倒した。
 地平線の向こうがかすかに青みがかってきた。夜明けが近い。

「私を帰したくないんでしょう? また監禁したいんでしょう? いっそ刺したいんでしょう?
 なら実家にいながらの方が計画を練りやすいですよね。
 私がそばにいた方が、いくらでも隙が見つかりますよね!?」

 戸惑った顔の一松さんにもう一度キスをする。

「最後の日に、どうしても我慢出来なかったら、私を好きにしていいから……」

 涙がポタポタと一松さんの顔にこぼれる。

「あなたが……好き。だから最後まで一緒にいて……」

「松奈……っ!!」

 一松さんが起き上がる。
 バランスを崩し倒れそうになった私を一松さんが支えた。

「俺も君が好き。すごく、すごく、すごく好きっ!!」

 分かってますよ、でなきゃ監禁までしないでしょ?

「帰したくないよ。君といると頭がおかしくなる……でも、やっぱり君と一緒にいたい!!」

 一松さんもボロボロ泣いていた。

 そしてキスをした。何度も何度も。

 問題が何一つ解決しないまま『好き』だけで強引に押し通した。



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