第3章 三ヶ月目のさよなら
一方、おそ松さんも行方不明&犯罪者の弟のことは、チラ見しただけでスルー。
「動画って聞いたことある。エロいのとか見られるんだよね? どう操作するの?」
新しい技術に、興味津々であった。
「ああ見れるよ。金出してエロ本やAV借りるのが馬鹿らしくなるから」
私がいない間、エロ動画で抜いてたらブチ殺す。
「マジで!?」
「はいはい、じゃあ一松さん、席変わって下さい。ええとですね、これをこう操作して、ここでクリックして……」
「おー、すげえ! で、エロいのはどうやって見るの?」
「まずこのキッズ向けサイトを読んで勉強して下さい。くれぐれも海外のサイトには接続しないで下さいね。有料会員登録とか出会い系サイトとか、絶対ダメだから!」
「了解了解!」
ちゃんと聞いてるのかな。初めてネットをする子供を見るようでハラハラする。
でも私たちについてくる気が失せたみたいなので、結果オーライだ。
「じゃ一松さん、行きましょうか」
「猫動画……」
「い・き・ま・す・よ・!!」
「……はい」
おそ松さんに、個人情報にだけは気をつけるように、と何度も言い聞かせ、席を離れた。
ブースを出るときおそ松さんが私に片目をつぶってきたように見えたけど、気のせいかな。
…………
ネットカフェから出る。まだまだ風が寒い。草木も眠る時間帯だ。
「チビ太さんのおでん屋さんはさすがに閉まってますよね」
さむーっと、身を縮める。
「帰りましょうか、一松さん」
数歩歩いて振り向いた。
一松さんはまだ、ネットカフェの入り口に立っていた。
「松奈……」
「どうしました? 一松さん」
「俺のこと、殴りたくならないの?」
「あ、はい。では殴りますね。歯ぁ食いしばって下さい」
「え? ちょ、ちょっと待っ――ぐはっ!!」
誰もいない時間帯で良かった。
腹に一発食らって倒れる一松さんの胸ぐらをつかみ上げ、もう一発殴る。あー、すっきり。
「ではこれで終わりました。家に帰りましょうか」
「い、いや、待って。それだけで終わらしちゃダメだよねっ!!」