第3章 三ヶ月目のさよなら
「他の皆さんは私と一松さんが再会することを、心配されてましたけど」
ストックホルム何たらにかかってるとか、また一松さんが私を傷つけるのではとか、もしくは一松さんが私を帰したくなさに、おかしくなるのではとか。
仲直りと私の帰還。両立しないんだろうけど。
でも、そんな理屈では、ついに自分自身を押さえられなかった。
一松さんに会いたい。その一心で出てきてしまった。
そしておそ松さんも、昨日は私を止めようとしていたはずだ。
「俺は松奈がケガしてるうちに動いて、傷が開くのが心配だっただけ。
一松は松奈が好き。松奈は一松に会いたい。
それでいいんじゃね? 危なくなったら『あのとき』みたいに俺が止めるし」
シンプルだなあ。
もしかして『漫画に伝言を書き込む』というアイデアはおそ松さんが考えたのでは?という確信めいた考えが頭に浮かぶ。わざわざ確かめる気にはなれないけど。
「おそ松お兄さんって頼りになりますね」
「ええ? 今頃分かった? 何てったって長男だからね!」
すごく得意そうに鼻の下をこする。
「で、可愛い妹は、一松がどこにいるって思うわけ?」
…………
「ここです」
「あ?」
背を丸めて猫動画を見ていた一松さんは、陰鬱そうに振り向いた。
「ええ!? ネットカフェだったの? 超ハイテクじゃん。一松、いつからパソコンを使えるようになったの!? 弟に先を行かれてお兄ちゃん、超ショックなんだけど!」
大声を出すなっ!!
「シー!! 静かにして下さい。寝てる人もいるんだから!」
やはりおそ松さんには『弟がネットを使えるようになってた』ということまで思い至らなかったようだ。
ネットカフェならホテルより安く、路上より安全、場所によってはシャワーも使える。
なのでもしや、と思ったのだ。
で、おそ松さんと一緒に駅前のネットカフェを何軒か回った。
どこも客の情報は出したがらなかったが、おそ松さんは口八丁で適当なウソをついた。
そして自分と同じ顔の客についてどうにか聞き出したわけだ。
そして、一松さんを発見したのである。
「何か用? 俺、動画を見てるんだけど」
久しぶりの運命の再会というのに、一松さんは超不機嫌そう。
顔はやつれ、髪も以前よりさらにボサボサになっていた。