第3章 三ヶ月目のさよなら
…………
自販機のボタンを押すと、ガランと音がして温かいカフェオレが出てくる。
プシュッと栓を開け、甘ったるい味を喉に流し、白い息を吐いた。
午前様ともなるとさすがに人通りはほとんど無い。
「さて、どこを探したものですか」
「まあめぼしいとこは、だいたいお兄ちゃんが探しちゃったけどね。あ、一口ちょーだい」
「あ、どうぞ」
……え?
「甘っ!! こんなのよく飲めるなあ」
「お、おそ松お兄さんっ!? なんでここに!?」
片手を赤パーカーに手を突っ込んで、カフェオレに顔をしかめるのは、間違いなく長男おそ松さんである。
「えー? それ、俺の台詞でしょ。女の子が午前一時に何しにいくの。
起きたカラ松が真っ青になってたぜ?」
と、むしろ楽しそうに言う。
「え。もしかして、また皆さんで私を捜しに、とか」
「いや俺一人だよ。松奈が行く方向は窓から見てたし、無理に止めて深夜に一人出歩かれるより、満足するまで捜させてやろうって言って、皆を寝かせてきた」
見透かされてる感が悔しい。
「で、どこを探すの? あいつがいそうな場所は俺がだいたい探したよ?
パチンコ、ファーストフード、ゲーセン、路地裏、駅の構内、河川敷――」
いそうな場所がホームレスめいてるなあ……。
「あいつ、俺たちの宝くじの当選金の残りをまだ持ってるんだろ? もしかして一人でアパートを借りた可能性もあるよね」
いや私の宝くじですからね!? 何であんたら兄弟の持ち物になってんすか!!
「まあ、心当たりがあると言えばありますけど」
「え? マジで!?……いやいや無い無い。長年のつきあいのお兄ちゃんが、さんざんあちこち探したんだよ?」
私に変な対抗心を持たないで下さいな。
ただ『あそこ』は深夜に私一人で入るに困る場所だったので、おそ松さんがいてくれるのは、逆に助かった。
「来て下さい、行きますよ」
と歩き出した。
「よし、じゃあ行くか!」
おそ松さんは軽い。
だが、その前に確認せねば。
「……おそ松お兄さんは私を止めないんですか?」
振り向いてそう言った。
「え? 何で? 一松に会いたいなら会えば?」
軽いなあ。