第3章 三ヶ月目のさよなら
一松さんと仲直りして元の世界にも帰って――なんて、きれいな終わり方を望む方がぜいたくなのだ。二つは両立しない。
どちらか一つだ。
そして私はもう、選んじゃってる。
「一松兄さんのことは、兄弟だから僕らが何とかする。
松奈はもう何も心配しないで帰る日までのんびりしていて」
トド松さんが私の手をギュッと握る。
「ねえ。僕だって松奈を連れて行きたいと思ってた場所、たくさんあるんだ。
今日はつきあうから。僕にも、兄さんらしいことをさせてよ」
その仕草に、ちょっとキュンと来るわたくしであった。
私は空の容器を前にイライラと足を動かす。
「トド松さーん、早く食べた方がいいですよー?」
「うーん、こっちの角度がチョコが大きく見えるかなあ。でもこっちの方がバランスが……」
トド松さんはスマホで新作フラペチーノの写真を撮りまくってる。
フェイスブックとツイッターとインスタに載せ、LINEで女友達に自慢するそうな。女子か!
「ああ、ごめんごめん。松奈はもう食べ終わっちゃったの?」
やっと満足が行く写真が撮り終わったのか、トド松さんが笑う。
だが猛烈なフリック開始、投稿作業に入り出した。あー、うっざい!!
「じゃあ一緒に食べよっか! えーと『彼女とすたばぁに来てまーす☆』」
おいコラ。だがトド松さんは投稿後も、
「あ、もう『いいね!』がついた! あ……ええ!? フォロワーが1コ減ってる!!
やっぱ『彼女』って入れない方が良かったかな。超ショックだよー」
……ノーコメント。SNS依存には注意しませう。
その後も、トド松さんとショッピングをしたり、ゲーセンで一緒に遊んだり、カフェで一休みをしたり。久しぶりに遊んで、本当に楽しかった。
が。
「『彼女にフラれました』って投稿に『いいね!』をつける人って何なんだろうね」
「スマホ、没収しますよ?」
「はーい」
トド松さんは困った弟さんなのであった。