• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



「カラ松兄さんがエサをやってくれてるから大丈夫」
 勝手にエサ係を押しつけられてる次男。
「でも、でもですねえ」
 焦りつつ次の口実を考えていると、

「松奈。松奈は、僕と一緒にいるの、嫌い?」

 トド松さんがうるっと、こちらを上目遣いに見上げてくる。
 ……か、可愛いっ!

「いえそんなことはありませんよ。一緒に行きましょう!」
「そう? 良かった!」

 ――はっ! わ、私は今、何を!!

 トド松さんはもちろん私より高身長。なのに『見上げてくる』って何。何なのこの末っ子オーラ。

「行こうよ、松奈!」
 トド松さんが手をつないで来た。

「はい!」
 ついつい一緒に並んで歩いてしまう。

 しかし『年上の異性と手をつないでドキドキ☆』より『可愛い弟と楽しい散歩☆』的に脳が錯覚しているのはなぜだろう。

「松奈、何を考えているの」
「いえいえいえ別にっ!!」

 でも私の沈黙を、トド松さんは別の意味に取ったようだ。

「あのね、松奈。僕は兄さんたちほど心配性じゃないから」

「え?」

 トド松さんが手をつなぎながら言ってきた。
「でも松奈がまだ傷ついてるって知ってるよ」
 うーん。傷かあ。

 さすがにあんなことがあって、ケロッと日常生活を送れるほど剛の者ではない。

 まず若干の閉所&暗所恐怖症が残った。
 一人で狭くて暗いところにいると、思い出して身体が震えてしまう。
 チェーンの音とか聞くだけガクガクするし、栄養食品やミネラルウォーターのたぐいも視界に入るだけで吐き気がする。

 ただし一松さん本人については、今のところ負の感情はない。
 皆がうっかり話題に出しても平気だし、むしろこちらから話を振りたいくらい。

 会いたい。会って一発殴りたい。

「松奈は元の世界に帰るんでしょう? なら一松兄さんとはもう会わない方がいい。
 どうしても会うのなら、こっちに永住するって約束して」

 トド松さんは言葉を切る。

「松奈がいると、一松兄さんはおかしくなるだけだから」

/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp