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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



 ねえねえ。もう少し何か無いんですかー。何で慣れちゃってる感じなのー?
 
 ……ま、まあいいや。とにかく全員寝てる。
 こっそりと部屋に戻って着替えて、出てっちゃおう。
 そろーっと布団から抜け出しかけると。

「どうした、子猫ちゃん。おトイレか?」

 うおわああああっ!! 隣のカラ松さんが目を開けていた。
「そ、そうなんです。しばしご不浄に……」
 そう言うとカラ松さんが起き上がる。

「ついて行こう。まだ足がふらついてるだろう。暗闇の中で転んでは大変だ」
「え。いえいえいえ、そんな……」

 と言うと、シーッと指を口に当てられた。

「俺がついているから、大丈夫だ」

 断れない雰囲気だった。
 ……男性にトイレについてってもらうのって、恥ずかしいんですが。


 そしてジャーッとおトイレを流し、私は洗面所から出る。
 待っていてくれたカラ松さんに、
「あ、あのー。すみませんでした。ちゃんと自分の部屋で寝ますので……」
 カラ松さんに恐る恐る言ったけど、彼は真剣な顔で腕組みし、
「まだ退院したばかりなんだ。あと一週間は様子を見させてくれ」
 えー。でもカラ松さんはカラッとした笑顔で、

「心配はいらない。子猫ちゃんの夜の安全は、俺がしっかり守るからな!」

 やべえ。『夜だからって、出て行けると思うな』宣言をされたっ!!

 そこまで、いたわってもらうほどじゃないから!
 私、元気ですからー!

 と言いたかったけど、言えもせず、私は朝まで六つ子の布団で眠れぬ夜を過ごしたのであった……。

 一松さん、助けてー。

 …………

 そして次の日、デカパン博士の研究所に私たちは来ていた。

「どうだスか?」

 薬を飲んですぐ、身体の変化は起こった。

「あれ?」

 お腹を切られて一週間も経ってない。
 鎮痛剤を飲んだところで、軽減出来る痛みはたかが知れてる。
 さっきまで少し身体を動かしても痛みがあり、もちろん抜糸もまだ先だった。

 なのに全然痛くない。

 ちょっと席を外させてもらい、部屋のすみで服をまくって、お腹の傷を確かめる。

「ウソ……!」

 残るかもと言われた傷が、きれいになっている。

 どこに傷があったか分からない。

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