第3章 三ヶ月目のさよなら
その後、皆で遊んだり、スイーツの品評会をやったり、漫画を読んだり、ソファでゴロゴロしたり……ゴロゴロ……。
「松奈ー、ニート達ー、夕飯よー!」
お母様が遠くで呼ぶ声。
『はーい!』と皆で返事をして、階段を下りていく。
どうしてか、涙が出た。
…………
…………
誰かが話をしている。
『落ち込まれるよりいいんだけど、ここまで元気だと逆に心配になるよな』
『でも病院の人は、傷に響くレベルでガッチガチに丸くなって寝るから困ったって』
眠い……超、眠い……。
薄目を開けると、私は色んな色の『はんてん』にすっぽりくるまれていた。
ここは六つ子の部屋だ。
私を部屋のすみに寝かせ、五人のお兄さんたちが話をしている。
私は暖かい『はんてん』にくるまれ目を閉じ、夢うつつで話を聞いた。
『結局、帰る、帰らないで、こんな騒ぎになったってことか』
『一松兄さん、女々しいにも程があるよね。松奈に、こっちにいてもらえるだけの甲斐性(かいしょう)がないってのを、認めたくないんだから』
『ニートだから仕方ないよ。しかも一松だし』
笑える話でもないのに笑い声。
『俺は明日も一松を探すから。見つけたらボコって連れ帰る。松奈には会わせない』
長男おそ松さんが仕切り出す。
『カラ松の方は?』
『デカパン博士からさっき連絡があった。装置の再起動準備は、予定通り進めてくれるそうだ。
松奈の傷をきれいに治す薬も、明日には作ってくれるらしい』
……!? 私の意識が一気に覚醒する。
デカパン博士、街に戻ってきてるの!?
『カラ松から聞いたときは驚いたよ。松奈も一言、俺たちに相談してくれれば良かったのに。そうしたら協力出来たし、こんなことにはならなかったのに』
とチョロ松さんの声。
『気を遣う子なんだ、仕方ないだろう』とカラ松さん。
『額が額だしなあ。とにかくこうなった以上、俺たちが責任を取って金を貯める。
んでもって松奈を、元の世界に帰す。いいな』
おそ松さんの声に了解、と弟たちが呼応した。
『じゃ、確認な。俺は明日も一松を探す。カラ松とチョロ松は何とか三百万を稼ぐ方法を探す。十四松は研究所の片付け。トド松は松奈についてろ』
了解、ともう一度弟たちが応えた。