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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



 それで……今日は監禁されてから何日目だったっけ?

 いったい、何日経ったのだろう。
 まだ期日は過ぎてない……と思う。

 …………

 …………

 今日もベッドに横になり、ボーッとしている。部屋の明かりを見上げている。
 使えないテレビはいつの間にか撤去され、時計やカレンダーは最初から無い。

 今は昼なのか夜なのか。
 寝たいときに寝て、起きたいときに起きる生活。

 体内時計もとっくにおかしくなってる。
 私はぼんやりと、窓のあった場所を見る。
 そこはもう鉄格子が外されていた。
 どうやったんだか窓は完全に塗り固められていて、周囲の壁と比べ四角く色が違う。

 外と完全に断絶されてしまい、もう鳥の声、雨の音も聞こえない。

 大半の時間、私はベッドに横になっている。
 時々、猫の本をチラッと開いて、また閉じる。

 退屈の余り一度だけ、本物の猫を連れてきてとせがんだことはあるけど、飼うのは私一人でいいと言われた。失礼な。でも……飼われてるみたいなものか。

 手を動かすとジャラリと、革手錠の鎖が音を立てた。
 のそのそと動き、ペンを握ってパズルの本も開いてみた。
 けど、ただでさえ単調な生活で鈍っている脳細胞だ。
 パズルはおろか問題文を頭に入れるのもおっくうで、私はすぐ本を投げ捨てた。
 
 私はベッドで寝返りを打ち、テーブルの上を見上げる。
 そこにはお湯のポットと、フリーズドライのパスタとスープの未開封品。
 あとはミネラルウォーターのボトルとビタミン剤。
 でも全然お腹が空いていない。

 一松さんがいないと、何も食べる気になれない。
 私はテーブルをしばらく眺め、また寝返りを打つ。
 目を閉じて、眠くも無いのにウトウトする。
 ダメな奴になったなあ、私。ホントにダメだ……。

 そんな怠惰な私の耳が、玄関の開く音、誰かが歩いてくる音をとらえた。

「!」
 私の全身の意識が一気に覚醒する。
 ガバッと起き上が――ろうとして、コケそうになった。
 ううう。超めまいが。ドサッとまたベッドに戻る。
 そして部屋の鍵が開いた。

 一松さんだ。マスク姿に紫のパーカーとサンダル。やっぱり猫背。
 片手に食材の入ったビニール袋。
 顔色はいい。前ほどやつれていない。
 大分、元気になったみたいだ。良かった。

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