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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら


 
 …………

 ここからの一人の時間の詳細は省略しましょうか。

 簡単に述べると、待っている間の三分の一はどうにか寝てた。
 次の三分の一は逃げようとひたすら、あがいてた。
 最後の三分の一は、ただ暗闇を見つめ、後悔してた。

「松奈、良い子にしてた?」

 一松さんが扉を開け、暗闇に光が差し込んだとき、私はブツブツ独り言を言っていたらしい。

 …………

 …………

「松奈……」

 今はソファのある別の部屋にいる。
 一松さんの膝の上にのせられ、抱きしめられている。
 ソファの形が松野家にあるものに似ていて、目を閉じるとあの家に戻ったように一瞬、錯覚する。

 目を開ければ、窓に目張りがされた閉鎖空間なんだけど。

 一松さんは私を抱きしめ、幸せそう。
 けどこれは、本当に一松さんが望んだことなんだろうか。
 でも今の私に出来るのは、機嫌を損ねないよう、顔色をうかがうことだけ。

「一松さん」
 手を伸ばし、恋人を抱きしめる。
「松奈」
 嬉しそうに抱きしめてくれる優しい腕。彼は鎖に触れ、
 
「新しい手錠、具合がいいみたいだね」
「ええ、楽になりました。本当に嬉しいです」
 私は心から笑う。
 今、両手にあるのは前の金属製の手錠では無く、鎖のついた革手錠。
 手首に優しい上、両手を動かせる範囲が増えて何をするにも、すごく負担が減った。

「暗いところに閉じ込めちゃったお詫び。
 罰とはいえ、あんなことはホントはしたくなかったし」
「すみません、一松さん。私のために……何てお礼を言ったらいいか」
「いいよ。松奈が分かってくれるなら」

 一松さんは本当に優しい人だ。
 けれど以前よりさらにやつれた気もする。
 私が一松さんを悩ませているからだ。

 一松さんのそばにいてあげないと。

「大好き……愛してます」
「うん、ありがとう」

 私の身体に触れ、抱きしめ、キスをしてくれる。
 そして私は優しくソファに押し倒される。

 世界は静かで私たちは二人だけで。
 それで全てが完結していて。
 他に何を求めると言うんだろう。

 欲しいものが全てここにある。

 私は、ここにいなければいけない。
 口づけを落とされながら、私は幸せを感じていた。


 それで……今日は監禁されてから何日目だったっけ?

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