第3章 三ヶ月目のさよなら
面倒くさい。人と話してたら疲れてきた。また横になっていいかなあ。
……じゃないじゃない。せっかく一松さんがいるんだ。
色々話さないと。
「この二日間は何をされてたんですか?」
「…………」
マズい。聞いちゃいけないことだっただろうか。
ボーッとしていた緩んだ気分に、冷や水が浴びせられる。
「いえ、すみませんでした! 別に来られなかったのを責めてるとか、そういうのではないです!
ただ気になっただけで!! 答えたくなければ答えなくてOKで――」
バンッ!とテーブルを叩く音。
それだけで全身が縮み上がり、怯えきって一松さんを見上げる。
「す、すみますみません!……ごめんなさいごめんなさい!!」
一松さんが立ち上がる。一瞬殴られるのかと思った。
でも、そんなことはなかった。でもただ見下ろされるだけで、威圧感がある。
身体が震えて冷たい汗が出た。
以前はそんなこと、考えたことも無かったのに。どうして。
「別にいいよ。こんな生活、嫌になるよね。分かってる……分かってるから」
以前にも何度か同じようなことを言われた。
でも今は、前ほどの余裕の無さを感じる。
ドンッ!!
身をすくませた後、一松さんが壁をこぶしで叩いたのだと知る。
一松さんは険しい顔で、私では無いどこかをにらんでいた。
「あのクソ兄弟……俺がどこで何しようと勝手だろう!!
いちいち詮索したり誘ってきたりすんじゃねえよ!!」
私に怒りが向いているわけではないようだけど。
そして一松さんは私の表情を見て、ハッとしたようにこぶしを下ろした。
椅子に座り、私の頭を撫でた。
「ごめん。怖がらせるつもりはなかった」
「い、いえ」
「ホントに、ごめんね」
一松さんはもう一度、私にキスをした。
「ん……」
舌で唇をなぞられ、少し口を開けると舌で舌を探られる。
「……ん……ふ……」
頬に手があたり、何度も口づけられる。
「ん……んん……!」
いつもより苛立ってるんだろうか。不安になりながら舌を絡めていると、
「……?……っ!?」
痛み。舌に痛みを感じ、反射的に顔を離そうとした。
「……!」
が、頭をつかまれ、もっと強く唇を押しつけられる。
舌を噛まれてる……痛い! ホント、痛いからっ!!