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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら


「口を開けて」
「あーん」

 もぐもぐと蜂蜜とバターのコラボを楽しみ、

「何だか、こんな洋食っぽい朝食なんて久しぶりですね」
 松野家はたいてい和食。朝からパン系統は珍しい。

「松奈が食べたいって言ってたから、ちょっと頑張った」
「おお、それは偉いですね! 褒めてさしあげましょう! これからもこの調子で頼みますよ!」
「次から乾パンと水ね」
「うわああ! す、すみません。一松さん! どうかお慈悲を!!」
「一松様!!」
「一松様ぁーっ!!」

 とアホなやりとりで笑いあいながら、食事を食べさせてもらう。

「そうだ。今日は松奈が喜ぶものを持ってきたから」
「本当ですか!? 見たい見たい!」
 手錠をされたまま、その場をピョンピョン跳びはねる。
 一松さんは笑顔で私を見、

「だからね――」

 …………

 ベッドの上でゴロゴロしてると、ガチャッと鍵が開き、一松さんが入ってきた。
 でもすぐには内鍵をかけない。
「一松さーん」
「ちょっと待って」
 一松さんは両手に大きな段ボール箱を持っていた。

「あのー、わたくし、急を要する事態でして」
「だからちょっと待って」

 一松さんは段ボール箱をテレビの前の床に置き、ドアに戻って内鍵をかける。
 そして私のところに来て、
「はい」
 ベッドの支柱につないだ手錠の鍵を外す。

 大荷物を持ってくるので部屋の入室前後が手薄になる。
『だからね、ちょっとベッドにつながれてて』と言われたのだ。
 で、つながれてました。

「どもっ!!」
 解放された私は大慌てで走ろうとして、
「ちょっと待って」
「わっ!!」
 腕をつかまれた、やや乱暴に引き戻されたかと思うと、自由な方の手にガチャリと手錠がかけられる。私は再度、自由を失った両手にうんざりして、

「い、一松さん。マジでご勘弁を!! これだと間に合わない可能性が……!」

「ドアを開けて下着を下ろして座るだけでしょ?」

「無意識にやってた動作だから、時間がかかっちゃうんですよ!!」

 ウソだと思うのなら両手を縛ってトイレに行きたまえ! 意外に大変ですよ、コレ!

 一松さんは困った顔。
 よしよし『両手を使えなくて可哀想→手錠は無しで』の勢いで両手を自由にしてもらおう。

「じゃ、俺もついていくから」

「……は?」


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