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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「立てるか、妹よ? さあ、兄の手につかまるんだ。
 遠慮はいらない。俺たちは……もう本当の家族なのだから!」

 眉の角度が鋭いカラ松さん。私に手を差し出してくる。

「それで何をしていたの? 松奈ちゃん」

 昨日、(比較的)真面目だったチョロ松さんが、私の手を取って助け起こしてくれる。
 私が返事をする前に、チョロ松さんはちゃぶ台にあるモノに目をとめ、

「これ、履歴書?」

 全員の動きが止まった。

 …………

 大きめちゃぶ台には六人分の朝食。

 六人はボソボソとそれをつついている。ハシの進みが悪いなあ。
 やはり二日酔いなんだろうか。味噌汁を温めた私は首をかしげる。
「ええ、ですから働こうと思って、とりあえず履歴書だけでも書こうと」
 不思議なことに、この家にはあちこちに履歴書がある。
 お母様は働く必要はないと言って下さったが、それでイイわけがない。

「働かざる者食うべからず。ですからね」

『……っ!!』
 
 六人の同じ顔が一斉に動きを止める。
 その顔は痛苦に満ち、さながら全身に矢を受けたかのよう。
 そして私はハッとする。何てデリカシーのないことを!
 彼らは無職なのだ!!

「す、すみません、もちろん世の中には色んな事情で、働きたくとも働けない方もいますから! 皆さんもそうなんでしょう!?」

『……っ!!』

 さらなる矢を受けたような顔。

「でなければ親御さんに苦労をかけながら、昼間からパチンコに入り浸り、深夜に飲んだくれて帰宅し親に介抱させるとか、人としてあり得ないですよね!」

『――――っ!!』

 六人全員が、心臓を止められたようにぶっ倒れた。

 …………

 食事も片付いた居間の和室。
 私は正座をし、居並ぶ皆さんに頭を下げる。

「すみませんでした。皆さんが真性の×××と知らず、傷つけるようなことを言ってしまって。
 反省しています。×××××とか口に出したりしません! どうかお許しをっ!!」

「君、それワザと言ってるよね!? 口に出さないってことは心の中では思ってるってことだよね!?」

 チョロ松さんが怒濤(どとう)の勢いで言う。ツッコミの切れる人だ。

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