第2章 二ヶ月目の戦い
クローゼットには他にも色々ある。
生活必需品があれこれ。なぜか応急処置関係が充実。
ミネラルウォーターと非常食が、箱単位で置いてあるのはありがたい。
……ぐー。
お腹が減る。そしてすごく喉が渇いている。
ペットボトルを一本、開けようとした。
「ぐ……」
手錠のせいでボトルを押さえる作業が……あんまり伸ばすとすり傷こすって痛いし!
「……うう……」
歯でどうにか開けようとしたけど、結局あきらめた。
そして疲れてベッドに座る。
雨がガンガンと窓を叩く。そうだ、外はどうなってるんだろう。
頭でカーテンを押し、外を見ようとする。
うわ、外から板が打ち付けられてる。
板の間から入るわずかな光が光源だったのだ。
「どうりで暗いワケですか。うーむ」
板の間に必死に目をこらすが、緑が見えるだけ。
窓の鍵までは、さすがにガードされてないけど格子+手錠だと難易度が高い。
「おーい!! 誰かいませんかー!! 変質者に閉じ込められてまーす!!」
窓を開けず、何度か大声で叫んでみたけど、もちろん反応は無い。
困ったなあ。
手錠をしたままウロウロしていると、
「……っ!!」
心臓がドクンと跳ね上がる。
靴音。誰かが部屋の外を歩いている。
私は壁際に身体を押しつけるように下がり、身を縮めた。
だが私の願いも虚しく、足音は部屋の前で止まる。
鍵をガチャッと開ける音。
そして。
「一松さんっ!!」
ホッとする。入ってきたのは、お盆を持った一松さんだ。
つなぎにシューズ姿。いつもの猫背でダルそう。
私は小走りに近づいた。
「良かったあ。変質者だったらどうしようかと思ってました!」
一松さんはお盆を下に置き、内鍵をかけた。
「それは良かったね。朝ご飯にする?」
「しますします、お腹が空いてたんですよ!」
一松さんはお盆をテーブルに置き直し、椅子を引いて座る。
私も手錠のまま椅子を引き、隣に座った。
朝食は何だろう。あ、両手を動かしにくくても食べやすいパンだ。
あとは野菜サラダとカフェオレ。
喉が渇いていたので、真っ先にカフェオレのカップを手に取る。
「いただきまーす……うわっち!」
「熱いから、急ぐと火傷するよ」
「先に言って下さいよ!」
ともあれ喉の渇きが癒えたので、次に急いでパンを食べた。