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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い




 習慣とは恐ろしいもので、普通に立ち上がろうとして、手錠のためバランスを
くずし転びかけた。
「い、いったあ……」

 しかも反射的に手をつこうとしたため、手錠に思い切り手首がこすれ、単に
赤かったのは、一気に擦り傷になってしまった。

 テーブルに椅子が二つ。クローゼットもあるようだ。
 扉の一つを開けると――開けにくいなあ、手錠だと。
 あ、バスルームか。となりに洗面所もある。良かった。
 そして別のドアを開け、やっとおトイレ発見。
「おトイレおトイレ」
 そのままトイレに……あれ、下着下ろすのとか、結構大変じゃね?
 人間、無意識に両手を使っている作業は山ほどある。

「うわー」

 寝ぼけた頭をしかりつけ、自由のきかない手でどうにかコトを済ませた。
 あ、このトイレ、ウォシュレットだ。座ったとこがあったかい。
 さすが日本! 最先端!! あー、温水が気持ちいい♪

 ……お下品なので、少し省略しましょうか。

 …………

 私はベッドに座っている。

「つかない……」
 やっと見つけたリモコンをいくら操作しても、テレビの真っ暗な画面には『受信出来ません』と出るばかり。
 どうやら、最初からケーブルをつないでいないようだ。ちぇー。

 リモコンを置くと、手錠がガチャリ。手首が痛いなあ。
 手錠が手首のすり傷をこすらないよう、私は慎重に室内を物色する。

 あ、電気のスイッチがあった。スイッチオン。これで室内が明るくなった。
 雨がざあざあと降っている。

 外につながるドア。開かない。
 鍵穴があるが、外にも内にも鍵があるタイプのようだ。
 つまり内側からも鍵が無いと開かない。
 なので誰かが入ってきたとき、隙を見て逃走、は難しいかもしれない。
 
 次にクローゼットを探索。こちらは手錠だともっと開けにくい。
 うわ、また手錠が手首をこすった。痛い痛い。
 何とか開くと、まず私の服や私物が入っているのが見えた。
「…………」

 私は着の身着のままで松野家に転がり込んだ。
 でも、さすがにそれだけでは生活出来ない。
 私の私物は、お母様がそろえて下さった物もあれば、お兄さん達にせびった
お小遣いで、何とか購入した物もある。

 その、松野家の私の部屋に置いてたものが全部入っていた。


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