第2章 二ヶ月目の戦い
習慣とは恐ろしいもので、普通に立ち上がろうとして、手錠のためバランスを
くずし転びかけた。
「い、いったあ……」
しかも反射的に手をつこうとしたため、手錠に思い切り手首がこすれ、単に
赤かったのは、一気に擦り傷になってしまった。
テーブルに椅子が二つ。クローゼットもあるようだ。
扉の一つを開けると――開けにくいなあ、手錠だと。
あ、バスルームか。となりに洗面所もある。良かった。
そして別のドアを開け、やっとおトイレ発見。
「おトイレおトイレ」
そのままトイレに……あれ、下着下ろすのとか、結構大変じゃね?
人間、無意識に両手を使っている作業は山ほどある。
「うわー」
寝ぼけた頭をしかりつけ、自由のきかない手でどうにかコトを済ませた。
あ、このトイレ、ウォシュレットだ。座ったとこがあったかい。
さすが日本! 最先端!! あー、温水が気持ちいい♪
……お下品なので、少し省略しましょうか。
…………
私はベッドに座っている。
「つかない……」
やっと見つけたリモコンをいくら操作しても、テレビの真っ暗な画面には『受信出来ません』と出るばかり。
どうやら、最初からケーブルをつないでいないようだ。ちぇー。
リモコンを置くと、手錠がガチャリ。手首が痛いなあ。
手錠が手首のすり傷をこすらないよう、私は慎重に室内を物色する。
あ、電気のスイッチがあった。スイッチオン。これで室内が明るくなった。
雨がざあざあと降っている。
外につながるドア。開かない。
鍵穴があるが、外にも内にも鍵があるタイプのようだ。
つまり内側からも鍵が無いと開かない。
なので誰かが入ってきたとき、隙を見て逃走、は難しいかもしれない。
次にクローゼットを探索。こちらは手錠だともっと開けにくい。
うわ、また手錠が手首をこすった。痛い痛い。
何とか開くと、まず私の服や私物が入っているのが見えた。
「…………」
私は着の身着のままで松野家に転がり込んだ。
でも、さすがにそれだけでは生活出来ない。
私の私物は、お母様がそろえて下さった物もあれば、お兄さん達にせびった
お小遣いで、何とか購入した物もある。
その、松野家の私の部屋に置いてたものが全部入っていた。