第2章 二ヶ月目の戦い
■Side――松野一松(6)
一人でいじけて、冷たくしている間に、松奈は勝手に走って行く。
走るというか、ほぼ暴走だ。
狂言誘拐はやらかすわ、変な研究所で勝手に片付けを始めるわ。
挙げ句に何の見通しもなく三百万を貯めようとか……馬鹿なの?
何で俺に相談しないの。
俺、恋人でしょ?
でもそんな俺のすることと言えば――女に平手打ちをするわ、鍵を勝手に取り上げるわ。
嫌われることしかしていない。
でも構わない。
松奈を帰したくない。
もう自分が何をしているか、よく分からなくなっていった。
…………
その日、松奈はまた、俺たちの部屋に遊びに来た。
すぴー。
今日も勝手に漫画を読み、他の奴と遊んで、十四松の膝を枕代わりに寝ていた。
……何で俺のところに来ないんだよ。
「最近は固まらなくなったよな」
おい、勝手に松奈の髪を撫でてんじゃねえよ!!
だが確かに松奈は、手足を伸ばし、くつろいで寝ている。
「うわ、そう殺気立つなよ、一松~。男の嫉妬は見苦しいぞー」
笑って飛び退くおそ松に腹が立つ!
「虐待されたとこを助けた猫が、やっと懐いてくれました~的な感動があるよな」
戻ってこりずに松奈の髪をいじりながら言う。
「松奈が聞いたら怒るよ~、おそ松兄さん」
トド松が呆れたように言い、チョロ松が苦笑する。
おそ松に撫でられ松奈はくすぐったそうに微笑む。
そのまま十四松に顔をすり寄せ、十四松が嬉しそうにしている。
カラ松が鏡から顔を上げ、その光景を見て笑っている。
……腹が立つ、何もかもに。
皆は笑っている。その笑顔もすぐ曇る。
「でも、もうすぐ帰っちゃうんだよね」
「仕方がないさ。帰る家があるんなら、無理に引き留められない」
「松奈。帰らないでずっといてくれればいいのに」
「どうしたの? 一松兄さん」
「……一松兄さん」
皆の声が遠い。
松奈はあるべき場所に帰る。
分かっている。
――分かるわけが、ないだろうっ!!