第2章 二ヶ月目の戦い
…………
「…………」
イライライラ。一松さんの朝ご飯が終わり、皿洗いもすませた。茶の間のテレビは死ぬほどつまらんトークを流し、一松さんは茶を飲みながらボーッとそれを見ている。
うう、宝くじ。早く換金したいのに。
無意識に何度もポケットに手をやってしまう。無事ですよね。
見ない間に、煙になって消えてませんよね!?
「どうしたの、さっきからソワソワして。俺のことなんて気にしないで、したいことをすれば?」
ドキッとする。いつもの皮肉っぽい言い方をしてるだけだと分かってるのに。
内心、何かを見透かされているのではと気が気では無い。
焦るな松奈……ついに一松さんとのゲームに勝利するときではないか。
奴にいかに私の帰還を妨害する意志があろうと、三百万を用意すれば私の勝ちなのだ。
「じ、じゃあ買い物に行ってきますね」
立ち上がり、買い物カゴを持って玄関に行こうとすると、
「分かった。着替えてくる」
とパジャマ姿の一松さんが立ち上がる。
「はっ!?」
「何を驚いてるの。荷物持ち、いるでしょ?」
そう。男六人を養うこの家は、買い物量がハンパない。
たまに予定が合うとき、一松さんに荷物持ちを頼むのは、よくあること。
「……俺がついてきちゃ、迷惑?」
うわっ。面倒くさいモードに入りかけてる。
この状況で断るのは不自然か。
「ま、待って下さい。なら何を買うか確認してきます!」
「……うん」
一松さんは、無表情でうなずいていた。
…………
一時間後、ようやく松野家に戻ってきたとき、私はへとへとだった。
両手いっぱいの荷物を玄関先に置くと、
「荷物、台所に持って行っとくから」
一松さんはヒョイッと買い物袋を持って行く。
「あ、どうもすみません……」
笑顔でお礼を言いながら、内心焦る。
どうする、この後どうする!?
初動で致命的なミスを犯したのが誤りだった。
あのとき馬鹿みたいに大声を上げていなければ、今頃三百万が私の手に……!
と思いながら、無意識にポケットを探る。
ずっと買い物袋で両手をふさがれてたけど、宝くじはちゃんと――。
な い 。