第2章 二ヶ月目の戦い
「あ……え……?」
何で? 何で無いの? どうして? ねえどうして?
行きがけ、寒くてポケットに手を入れてた。
ポケットからまた手を出すとき、出ちゃった?
入れ方が甘くてスッと落ちちゃった?
さらに汗が出て、
「どうしたの?」
一松さんが戻ってきて、残りの買い物袋を持とうと――。
「松奈?」
「ちょっと忘れ物が!!」
私は玄関を出て、一目散に商店街に駆けだして行った。
…………
…………
遠くでカラスが鳴いている。
あらゆる場所を探し回り、結局宝くじは見つからなかった。
路地裏に力なくしゃがみこむ。
私は路地裏の猫スポットにいた。
野良猫たちは、にゃーにゃー鳴いて、私にエサをねだる。
ごめんね、今、エサは無いんだ。
シクシク泣きながら、我が身を哀れむ。
何で、幸せというのはこの手につかみかけたとき、こぼれおちていくのか。
一松さんよろしく、両手で膝を抱え、がっくりしていると、
「ちょっと」
ポンッと肩に手を置かれ、ビクッとする。
「わわわわたくし、東京都赤塚区×××の×××の松野家に在住しております――」
「職質じゃないよ。俺だから」
「っ!! 一松さん!!」
振り向くと、パーカーにジャージ、サンダル姿の一松さん。
足下で、喜んだ猫たちがまとわりついていた。
「松奈」
両手を広げられ、私はまっすぐに飛び込んだ。
「一松さん~」
よしよしと背中を撫でていただけた。
「実は、大変にショッキングな事故がありまして……」
「と言いながら、俺のポケットを探らない」
……チッ。
私はズザッと後じさりし、距離を取る。
……そう、あと宝くじを持っている可能性があるのは、一松さんのみ。
私の天才的な演技でもって、宝くじのことは完璧に隠し通している。
だがこの悪魔のこと。野生の勘で何かに気づいた可能性は高い。
「一松さん、何かを隠していますね?」
「先に隠していたの、そっちでしょ?」
私が構えを取るが、一松さんもポケットに手を突っ込んで、いつもの猫背のまま。
私の闘気を察したにゃんこたちが、速やかに路地裏から逃げていった。
「一松さん、ついに雌雄を決する時が来たようですね!!」
「何の漫画を読んだの。いいからこっち来て。ちょっと話し合おう」