第2章 二ヶ月目の戦い
そう思っていたら、一松さんの顔が近づいて、キスされた。
「松奈。俺は何を言われても信じるから。だから話して」
少しだけ優しい笑顔が私を見下ろす。
風邪で弱った心がくじけそうになる。
本当に、信じてくれる?
私のことを。怖がらないで、受け入れて、くれる……?
「大丈夫だよ」
手を握られる。熱のある身体には少し冷たく感じる。
「松奈」
「実は……」
ついに私の唇が動き出す。
「私……べ、別の世界から、き、来たんです……」
反応を見るのが怖くてバッと顔をうつむかせる。
一松さんの手だけが感触の全て。
ついに言ってしまった。どんな顔をしているのか。
優しく笑っているのか、それとも『××××だったのか……』と呆れているのか。
どれくらい時間が経っただろう。
「……で?」
「え?」
顔を上げる。一松さんは不思議そうに、
「いや、だから別の世界って、どういう世界?」
「えええ? この世界とよく似てるんですけど……」
「時代は二十一世紀だよね? 日本はある? 宇宙人とかモンスターとか共存してる系?
こっちには自分の超能力とかで来たの? 違う? デカパン博士に連れてこられた? あ、そう」
「い、いやいやいやっ!!」
思わず起き上がる。
何だこの人! 何なんだこの『慣れてます』系の反応はっ!!
高熱のためではない汗がたらりと落ちる。
「あの。もしかして異世界だの、宇宙人だの、よくある話なんですか……?」
「そうだけど」
『何当たり前のこと、言ってんのこいつ』みたいに言われたああっ!!
何だったの、私のこの二ヶ月の悩みはっ!!
薄々思っていたけど、やっぱり似て非なる世界だ、ここっ!!
「ということは、もしかして一松さんたちも子供の頃、そういうご経験を!?」
「あの時代はもっとぶっ飛んだのもOKだったからね。よく似た別世界とか普通に行ってたし、タイムマシンで石器時代に行って暮らしたり、インベーダーと戦ったり、吸血鬼にされたり……」
一松さんの口から聞きたくなかったファンタジーな発言が次々にっ!!
『あの時代』って何なの!?
私があわあわしていると、一松さんはそっと布団をはがし、私の身体の両脇に手をつく。
寒い寒い。まだ私の身体はウィルスと戦闘中ですからね!?