第2章 二ヶ月目の戦い
一松さんは畳に座り直し、
「何でこんな高熱で動くの。馬鹿なの?……馬鹿なのに、何で風邪引いてるんだろう」
真顔で首をかしげるな!! 風邪が治ったら速攻で殺すからなっ!!
ああ~、おしぼりがひゃっこい。
薬が効いたのか、身体が一気に楽になってきた。
一松さんは無表情に私を見下ろしている。
…………
「本当に大丈夫? 何かあったら、僕のスマホにかけてきてね」
「じゃあ、俺たち、チビ太のとこで食べてくるから~」
「一松。松奈が弱ってるからって襲うんじゃないぞ!!」
「すみません。ご心配おかけしました。ごゆっくり」
私の状態が良くなったためか、五人はドヤドヤと出かけていった。
これからチビ太さんの屋台に行って、下手すると遊び足りないとパチンコかな。
どうせ負けて飲み直して……午前様コースだ、これ。
そして玄関の戸が閉まり、静かになる。
と、そこで私の枕元で陰鬱な顔をして座っている一松さんと目が合う。
「一松さんも、もう大丈夫なんで、出かけて――」
「薬が効いて一時的に状態が良くなってるだけ。まだ目は離せないから」
「赤ちゃんじゃないんだから、ぴったりついてる必要はないですよ」
「何、俺にいてほしくないの?」
「いや別にそんなつもりは……」
うわー。また面倒くさいモードに入ったー。
「別にいいけど。俺もあいつら相手じゃないから調子が狂うし」
病人相手にすねないで下さいよ。
しかし他のご兄弟相手だと、どう看病するんだろう。
やはり氷水を頭からぶっかけて悪化させる系だろうか。
「また失礼なことを考えられている気がする……」
冷たっ!! だから目の上におしぼりかけないで!!
…………
夜は静かに更けていき、特に何ごともないまま、時間は過ぎていった。
読み終わった漫画本を脇に置き、一松さんは足を組み直す。
「ねえ。話してくれる? どこから来たのか」
いつかは話さなきゃいけないことだと思ってたけど。でも今で無くとも……。
「もういいでしょ。俺は松奈を帰したくない。松奈のことをもっと知りたい。だから聞かせて」
いつまでも、隠し通せるものではないと思っていた。
でも……意気地無しの自分が邪魔をする。
本当のことを話して病人扱いされたら。
信じてもらえなかったら。