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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 一松さんは畳に座り直し、

「何でこんな高熱で動くの。馬鹿なの?……馬鹿なのに、何で風邪引いてるんだろう」
 真顔で首をかしげるな!! 風邪が治ったら速攻で殺すからなっ!!

 ああ~、おしぼりがひゃっこい。
 薬が効いたのか、身体が一気に楽になってきた。
 一松さんは無表情に私を見下ろしている。

 …………
 
「本当に大丈夫? 何かあったら、僕のスマホにかけてきてね」 
「じゃあ、俺たち、チビ太のとこで食べてくるから~」
「一松。松奈が弱ってるからって襲うんじゃないぞ!!」

「すみません。ご心配おかけしました。ごゆっくり」

 私の状態が良くなったためか、五人はドヤドヤと出かけていった。
 これからチビ太さんの屋台に行って、下手すると遊び足りないとパチンコかな。
 どうせ負けて飲み直して……午前様コースだ、これ。

 そして玄関の戸が閉まり、静かになる。

 と、そこで私の枕元で陰鬱な顔をして座っている一松さんと目が合う。

「一松さんも、もう大丈夫なんで、出かけて――」
「薬が効いて一時的に状態が良くなってるだけ。まだ目は離せないから」
「赤ちゃんじゃないんだから、ぴったりついてる必要はないですよ」
「何、俺にいてほしくないの?」
「いや別にそんなつもりは……」
 うわー。また面倒くさいモードに入ったー。

「別にいいけど。俺もあいつら相手じゃないから調子が狂うし」

 病人相手にすねないで下さいよ。
 しかし他のご兄弟相手だと、どう看病するんだろう。
 やはり氷水を頭からぶっかけて悪化させる系だろうか。

「また失礼なことを考えられている気がする……」

 冷たっ!! だから目の上におしぼりかけないで!!

 …………

 夜は静かに更けていき、特に何ごともないまま、時間は過ぎていった。
 読み終わった漫画本を脇に置き、一松さんは足を組み直す。

「ねえ。話してくれる? どこから来たのか」

 いつかは話さなきゃいけないことだと思ってたけど。でも今で無くとも……。

「もういいでしょ。俺は松奈を帰したくない。松奈のことをもっと知りたい。だから聞かせて」

 いつまでも、隠し通せるものではないと思っていた。
 でも……意気地無しの自分が邪魔をする。
 本当のことを話して病人扱いされたら。

 信じてもらえなかったら。
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