第2章 二ヶ月目の戦い
…………
後頭部を何やら持ち上げられる。
何。何々?
と思っていたら、そっと下ろされる。少し硬い感触。あ。冷やっこい。
何だろう、これ。水枕? うわ、水枕だ。今どき売ってるのかー!
硬いけど冷やっこい。冷やっこいけど硬いー。
誰かが私に布団をかける。ありがとー。
『あーあ、こんなとき母さんがいてくれたらなあ』
『熱が下がらない!……俺を一人にしないでくれ……!』
『縁起でも無いことを言うんじゃ無いよ! 薬、飲めるかな?』
『水もだ。吸い飲みって、どこにあった?』
『お医者さんに電話かけてきたー!』
『追加の氷水、持ってきたよー』
うるさいなあ。人が寝てるのにガヤガヤと……。
……意識が……。
…………
そっと目を開けると、夕暮れだった。
あー……声が……出ない……。
「起きた?」
一松さんだ。夕日のさす部屋に一松さん一人だけ。
二人になっちゃいけない決まりなのに……。
私は私の部屋に布団を敷いて寝かされていた。
ちゃんとパジャマにも着替えさせてもらっている。
おしぼりをしぼる音。一松さんはそっと私の額にそれをかける。
「…………」
私は必死に口を動かす。
「どうしたの。何が欲しいの?」
一松さんが私の口に耳を近づける。
ひ……冷え……○タ……。
「……我慢して」
冷却……ジェル……シー……ト……。
「なんで言い直すの」
くっ。国内初の冷却ジェルシート発売は平成五年!
昭和には荷が勝ちすぎたか!!
「何か馬鹿にされてる気がするけど、この方がいいと思うよ。すぐ取り替えられるし」
そうかなあ。うわ、目の上にかけないで。あー冷え冷えー。
「起きられる?」
背中を支えて起こされ、急須みたいな形の容器で、何か飲まされる。
スポーツ飲料みたいだ。ごくごく……。
「ども……」
「声、出た? 良かった」
私を横にし、布団をかけ直す一松さん。
「医者に来てもらって、抗生剤を打ってもらってるから」
注射されたの!? 気がつかなかった!!
「す、すみません……」
「今、おそ松兄さんがおかゆ作ってるから。何か食べたいもの、ある?」
「げ、現ナマで……三百十万円……」
「てい」
い、いったあ!! 病人にデコピン、いったあっ!!