第2章 二ヶ月目の戦い
イヤミ社長は嫌そうに、ちゃぶ台に番茶を出してくれた。
「いただきます。いやあ、ご立派な新居で」
ちゃんと、ごあいさつしたつもりだったのだが、
「お金なら貸さないざんすよ。仕事もないざんすよ! チミと組む気はないざんすよ!!」
「ひどい!! 迫害されている可憐な少女に、そんな血も涙もないことを仰るだなんて!!」
「いちいちツッコミを入れるほど、ミーは親切じゃないざんすよ」
くそっ、最近のツッコミ役は冷酷非情だ。
…………
私がイヤミ社長の家を訪問したのは偶然である。
あのろくでなしの六つ子は、たいてい昼前か昼過ぎに起きてくる。
なので朝から一人で家事をし、散歩をしてたら河川敷に来た。
そしたらイヤミ社長の段ボールハウスが、プレハブハウスに進化していたのである。
「つまりプレハブを購入できるだけの金――資金源があったってことですよね?」
よって礼儀正しく新居のお祝いをさせていただくことにした。
三百万を貯める夢は諦めちゃいない。拾った宝くじだって神棚に飾ってあるし!
するとイヤミ社長は
「おフランス帰りのミーは商才があるざんす。ミーがちょっと本気になれば、我が家なんてちょちょいのちょいざんすよ!」
いや河川敷にプレハブって時点で撤去対象だろう。
「そのノウハウをぜひお聞かせ願えれば!!」
イヤミ社長の胸ぐらをつかんで懇願するが、
「ダメダメダメダメざんすよ!!」
「イヤミ社長~」
「ダメったらダメざんす!!」
と、しばらく押し問答が続き、ついに――。
【ルート分岐点――松野一松ルート】
……ん? 何だ、今の表示。
「どうしたざんすか?」
「あ、いえ……」
白昼夢かな。まあいいか。
私たちは薄暗い階段を下りていく。
ここは繁華街の一角にある地下ライブハウス。
階段の先は小さなライブ会場に続いている。
ここで、メジャーを夢見る多くのアイドルがライブ活動を頑張っているのだ。
イヤミ社長は最近ちょっと羽振りがいいらしい。
そのおこぼれに預かろうと……もとい、お仕事をお手伝いしようと、私はイヤミ社長についてきた。
「地下アイドルのプロデューサーって儲かるもんなんですか?」
「何とか利益は出てるざんすよ。熱心なカモ……ファンが金を落としてるざんすからね」
言い直した。言い直した!!