第2章 二ヶ月目の戦い
「いつの間にって、松奈が疲れて寝てたときに――」
「外で言わないで下さいっ!!」
顔を真っ赤にして怒鳴る。人が寝てるとき、勝手に服を探るな!!
「俺がいないときに勝手に研究所に行かれても困るし、俺が預かっておくから」
ニヤニヤ。こいつ……また『いけないこと』目的で私を連れ出すぞ、絶対!!
「これで場所の問題も解決したし、良かったね」
「良くないっすよ!!」
涙目で訴えたが、紫色の悪魔は笑っている。
「おーい、どっかに食べに行こうぜ!」
松野家に戻れば、おそ松さんたちが家の前で待っていた。
「いくよ、松奈」
「はい、一松さん……」
肩を落として一松さんについていき、私は深くため息をついたのだった。
…………
…………
ピンポーン♪
チャイムを押すと、プレハブ小屋の引き戸がガラッと開いた。
「なんざんす? 勧誘はお断りざんすよ」
「イヤミ社長! 社員の松奈です! お仕事下さい!!」
ピシャリッ! ガチャッ!!
目の前で扉が閉まり、鍵がかかる音が聞こえた。
何故!?
「あーけーてーえー!! あーけーろーおーっ!!」
とりあえず扉をガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンと叩き、エコーのかかった低音で呼びかけた。
「帰れざんす!! もうチミには関わりたくないざんすよ!!」
扉の向こうからは怯えの入った泣き声。
「新築祝いのごあいさつに参りました!! ついでに仕事と金をよこせ下さい!!」
「とっとと帰れざんすっ!! 警察を呼ぶざんすよ!!」
イヤミ社長の怒鳴り声がしばらく響いたのだった。
…………
「お邪魔しまーす!!」
どうにか鍵を開けてもらい、ガラッと扉を開けると、
「ちょっと!! チミらの妹が不法侵入してるざんすよ!!
今すぐ引き取ってほしいざんす!!」
イヤミ社長が、黒電話に怒鳴り散らしているところであった。
しかしまだ朝と言える時間帯。いったい誰が電話に出たんだろう。
電話を替わる前に、イヤミ社長はガチャンと受話器を置いた。
「すぐに来るそうざんす! さっさと帰るざんす!!」
それ、入れ違いにならないですか?