第2章 二ヶ月目の戦い
『えーっ!?』
五人のお兄さん+私の声である。
……治験(ちけん)が何か分からない人はググってみよう。
あくまでまっとうなお仕事なので、その点だけは誤解なきように。
でも『裏』って何すか一松さん。
「松奈ー!! そういう仕事だけは、お兄ちゃん許さないからね!!」
「目を離せない子猫ちゃんだ。『好奇心、猫をも殺す』という言葉、知っているかな?」
「危ないことするなって言ってる先から、どんどん怖い方向に行ってるよ、この子!!」
「治験って稼ぎがいいよね! 俺と一緒にやる!?」
「十四松兄さん! 松奈もやるならもっと他人を食い物にする方向で行かなきゃ」
何か私の評価がダダ下がりじゃないっすか?
一部、怖いことを言ってる人たちもいるし。
「帰ろ帰ろ。今夜は飲み屋で食ってこう」
「今後は求人誌に載ってるとこ以外は禁止だからね!!」
「俺もよく見てるようにするよ」
「頼むよ一松兄さん。本当に松奈ってば――」
肩に手を回され、半分小突かれつつ、連行されていったのでした。
…………
…………
翌朝、お父様とお母様は熱海へのご旅行に出発された。
大きな旅行カバンを持ってニコニコし、
「それじゃあ、いってくるからな」
「皆、留守は頼んだわよ。松奈、家事は適当でいいからね」
『いってらっしゃーい!!』
七人でお見送りし、後はそれぞれバラバラに散ろうとして。
「言っておくけど!! 父さんと母さんがいないからって羽目を外さないこと!」
おそ松さん。明らかに私と一松さんを見て言ってない?
「門限は六時! 宿泊は不許可! 男女交際は健全に!!」
『おー』
一松さんはうっとうしそうな顔だけど、他の兄弟達は拍手していた。
「よーし、それじゃパチンコ行くぞー!!」
『おー!!』
六つ子のノリが不明である。一方一松さんは、
「俺、今日は松奈についてるから。目を離すと何をしでかすか分からないし」
失礼な!! するとチョロ松さんがおそ松さんの隣で、参謀然と、
「それについては許可しよう。でもさっき言ったとおり、宿泊は不許可!『休憩』もダメだからな!!」
「……。分かってるよ」
D○怖ぇ。何でデートをするのに兄の許可がいるの。
あと道ばたで大声を出さないで。