第2章 二ヶ月目の戦い
『……は? え? ここ?』
一松さんはつい素に戻り、戸惑いつつ、ちょっと足で力を入れる。
『あー、そこ、いい! もっと踏んで!!』
『こ、こう?』
『もっと強く!!』
『こう!?』
『もっと!!』
『これが!? 欲しいの!?』
『欲しい!! ああ、下さい!!』
……冒頭のシーンに至る。
いやあ、連日の重労働で、肩とか腰とかに筋肉痛が来ちゃってさあ。
ピンポイントに踏まれてヘヴン状態になってしまった。
「てか、普通に揉めばいいでしょ」
と一松さん。ちょっと我に返ったのか、私の背中にまたがって、腰を揉んでくれる。
「ああ~」
私は至福の心地である。
「僕も!! 僕も揉んであげる!!」
十四松さん、何か混ざりたそうだ。一松さんは半眼で弟をにらみ、
「ダメ。俺以外の奴はダメ。そこで見ていろ」
「へこむ~」
「年寄りじゃあるまいし、何で腰痛になってんの。本当にここ最近、何やってんの?」
「ああ、そこ、いいです。そこ、こう、後ろから攻められてる感!!」
「妙な言い方をしない!!……そういうのもイケる?」
後半、ボソッと耳元でささやかないで。あと、背中に当たるものが強度を増している
ような!……コホン、お下品でしたね、失礼。
「二人だけ楽しんでずるい~」
ハブにされた十四松さんは畳に転がってジタバタ。
お気の毒に思いつつ、私はしばし、苦痛の快楽にもだえたのであった。
…………
というわけで、謎のプレイの後、一松さんと私は仲直りした。
のだが。
「ええー? 今日はダメなんですか?」
「ごめん、先約あるの。明日、つきあってあげるから」
一松さんは私の頭をなでなで。ゴロゴロ。
曰く、彼らの大事な幼なじみがイベントを開くらしく、応援に行きたいのだそうだ。
「松奈も一緒に行く? トト子ちゃんにはまだ紹介してないし」
恋人の口から女性名(しかも『ちゃん』付け!)が出ると、ものすごく複雑なものですな。
どういう人なのか十四松さんに聞いてみると、あの十四松さんが珍しく顔を赤くした。
「すっごく可愛いよ!! 小さい頃から僕らのマドンナだったの!!」
例えの仕方がちょっと古いような。