第2章 二ヶ月目の戦い
でも一松さんもうんうんとうなずくあたり――滝つぼに蹴り落としたくなるが――恋愛対象というより、アイドルへの憧れに近いものらしい。
……そう自分を納得させておかないと、この場でタコ殴りにしてしまいそうだ。
「昨日なら良かったんだけどね。やっぱり来る?」
ボソリと呟くあたり、まだ怒りが残ってる気もするが。
「いえ、やることがありますんで」
遠慮しておいた。幼なじみ同士の楽しい空間に、割って入るのも悪い気がしたし。
一松さんと十四松さんは玄関まで見送りに来てくれた。
「じゃ、バイト探し、頑張って。危ないことは絶対にするなよ」
「頑張ってね、松奈ー!!」
まだバイト探しと勘違いされてるのかな。まあいいか。
「俺たちは夕飯には戻る。それとも皆で食べに行く?」
今日はお母様もお父様も夜遅い。私が夕飯担当だ。
「いいえ! 節約しましょう。ちゃんと作りますから。
皆さん、帰りに飲んできちゃダメですよ。いってきまーす!」
と手を振って出ようとすると、廊下のふすまがそろーっと開き、陰鬱な表情のD○四人が顔をのぞかせた。
「お見送りとは仲がいいねえ、昨晩はお楽しみだった一松くぅん」
お顔を半分だけ出してるおそ松さん。昨晩? 何かあったんですか?
「さっきはずいぶんと賑やかだったけど、何かしてた? 十四松」
同じくお顔を半分出しているチョロ松さん。
「十四松、説明してやれよ」
一松さんに肘でつつかれた純真な十四松さん。
「うん!!」
彼は余りぎみのソデを振り上げ元気よく、私たちが健全に会話していたと――。
「一松兄さんが松奈を足蹴にして、松奈は後ろから攻められて喜んでたよー!!」
……。
戦場と化した松野家を後に、私は道を急いだ。
十四松さん……コントからハブられた恨みじゃなかろうな。
私はそそくさと、研究所への道を急いだ。
…………
…………
研究所で、軍手をして散乱した物を片付ける。
「はあ……まだまだですねえ。もう、これじゃあバイト探しの暇もないし」
てか、一松さんとのコントで、自分のお昼ご飯を忘れてた。
コンビニでお菓子でも買ってくれば良かった――って、お金ないし。
器材を段ボールに戻しながらため息。
「私、何やってるんだろう」