第2章 二ヶ月目の戦い
松野家までもう少し、というところで、例の異様な顔面の助手が出てきた。
「ん?」
どうも一松さんも知っている相手らしい。
「何、こいつと知り合いなの?」
眉をひそめる。しかし巨大顔面助手が先に、
「三百万は用意出来たかよ~ん」
「は?」と一松さん。
「うわあああ! ちょっと、ちょっとこっちに来て下さいっ!!」
大慌てで助手を引っ張り、物陰に引きずり込む。そして大慌てで、
「ま、まだ用意は出来てませんが、期日までに工面するのでお願いします!
てか、何でまたあなただけ戻ってきてるんです? 博士はアメリカじゃ?」
「すぐ戻るから大丈夫だよ~ん」
「無性に腹が立ちますが、ともかくお金は用意するんで準備をどうかよろしくっ!!」
「了解だよ~ん」
用事はそれだけかと思いきや、顔面助手は私に鍵を渡してきた。
「何すか、これ」
「研究所の鍵だよ~ん」
「は?」
「借金取りに荒らされたから、帰るまでに掃除しといてほしいよ~ん」
「はあああ!? 何で私がそんなことを!?」
そもそもデカパン博士の研究が原因で私はここにいる。
なのに三百万を用意しなければいけない上、研究所の掃除までっ!!
だまされてるとまでは思わないけど、何か良いように使われてないか、私!?
「助手なんだから、あなたがやればいいでしょうが!!
あと借金取りって何!? 向こうで何をやらかしてんすか博士は!!」
「鍵は変えたから、不審者はもう入ってこれないよ~ん」
あなたが一番の不審者だと思う。
「じゃアメリカに戻るよ~ん。××日後に戻るから、頼んだよ~ん」
「いや手伝っていって下さいよ。ちょっとお!!」
怒ったが、異様に顔面のでかい男は、てけてけと小走りに路地の向こうに消えた。
手の中の鍵を見つめ、呆然としてると、
「もしかして『帰る』って、単に電車に乗って帰るってことじゃないの?」
「うわあああ!!」
一松さんが真後ろに来ていた。やべえ。
彼は首をかしげ、
「そういえば最初に現れたのが研究所だったっけ。
松奈、あの連中とどういうつながり?」
「そ、そこまで聞かれていた!? どれだけ耳が良いんです!!」
「あいつの声はよく聞こえなかったけど、おまえの方はすごい大声でしゃべってたし」
話をそらそう! 何としても別の方向に話を進めてみせるっ!!