第2章 二ヶ月目の戦い
「ああ、そういうのもいいか。嫌がるのを無理やりっていう。
そんな顔しないでよ。冗談に決まってるでしょ。
無理強いはしないから、そう怖がらないでよ」
言葉面は優しいが、奴の顔はさながらネズミを捕まえた猫の雰囲気。
キョドる私を見下ろし、サディスティックな笑みを浮かべている。
何で!? ねえ!? 前回、受付にもキョドってた一松さんはどこ行ったの!?
何で今回は『慣れてます』オーラで部屋まで行っちゃうの!?
恋愛って、最初に主導権を握ってた側が、その後も主導権を握るものでしょう!?
告白だって、私からしましたよね!?
なのに気がつけば立場が逆になってるって何で!?
「あー、でもちょっと我慢出来ないかも……」
「はあ!?」
立ち上がろうとして、後ろに引き寄せられ、そのまま一松さんの膝の上に乗る格好に。
ベッドの上で後ろから腕でがっちり拘束され、身動きが取れない。
服の上から胸のあたりをまさぐられ、『ここらへん?』と刺激される。
『どこですか』と思いつつ、何だか力が抜けていく。
「ねえ、約束して」
耳朶を軽く噛まれ、ささやかれる。
「は? な、何をです?」
声に怯えが出ないよう頑張ったけど、やっぱり出てるかも。
「他の奴らを絶対に見ないって」
「いえ、見るわけないでしょう。てか一度も見てないし」
動物になってたときのことは、カウントしないでほしいなあ。
「だって六つ子だよ。全員同じ顔だよ? 俺があいつらで、あいつらは俺。分かる?」
後ろから、こちらのボタンを外しながら一松さんが陰鬱に言う。
「さっぱり分かりません……ん……っ……とにかく、み、見ない、から」
そう言うとやっと落ち着いたのか、
「こっちを向いて。ごほうび、あげるから」
だから何でキャラが違ってるんですか、と内心で突っ込みつつ、振り向いてキスをする。
「ん……」
さっきより強く抱き寄せられ、舌を絡められる。息がちょっと苦しい。
あと何か当たってる。こっちの下半身に当たってる。
身体が熱い。一松さんの身体も、熱い。
何となく目があってもう一度キスをし、そのままベッドの方に倒れ込む。
しかし、やはり当たっている。どうしたものかと手で触れると、一松さんの息がわずかに上がった。
「こ、ここ?」
自分でも『何が』と思いつつ、ズボンの上をそっと撫でる。