第2章 二ヶ月目の戦い
「じじじじ冗談でい! ツ、ツケの支払いは次でいいからなー!!」
チビ太さんが、猫たちの上を上手くジャンプし、ダッシュで逃げていった。
「ちょっとっ!!」
私も逃げようとするが、ガシッと手首をつかまれた。
全身が恐怖で震える。
私を捕らえた一松さんは、見たこともない邪悪な笑みを浮かべていた。
「四百万は無いけど、ホテル代くらいなら持ってきてやったから。
言って聞かせて分からないのなら、身体で教えてやらないとね」
待て待て。何でそんな怖い台詞がサラリと出る。
あなた本当に、一ヶ月前までD○だったのか!? 怖いですよっ!!
「俺の機嫌、取りたいんでしょ? 他の奴に色目を使ったお詫びをしたいんでしょ?」
言葉の後半は、あなたの被害妄想でしょう!!
仕方ないじゃないですか! 動物って、可愛がってくれる相手になつくものだし!!
「じゃ、行こうか」
言葉はやわらかいが、奴の手は私の手首を決して離さない。
むろん、行く方向は松野家ではない。
一松さんが歩くのに合わせ、猫たちがまた道を開ける。
てか、この猫は何なんですか。これだけ猫を操れるなら、色々就職の道が
ありそうな気がするんですが!!
「誰かー。誘拐されるぅー」
助けを求めてはみたが、ンなものが来るはずがなかったのであった。
…………
…………
どうしてこうなった。どうしてこうなった。
ど う し て こ う な っ た 。
今考えているのは、これだけである。
ベッドに押し倒されている。
一松さんはシャツのボタンをいくつか外した状態で、気だるげに私を見下ろしている。
外れかけたネクタイがこちらに落ちてきそう。
「風呂に入らないの?」
「いえですね、ですから、一人でなら入るんですが!!」
「おまえが入らないなら、俺も入らないけど。バスローブは死んでも着たくないし」
なぜ唐突にバスローブが出てくる。
だが敵は、嫌なことを思い出したように舌打ちしている。
「いいから、入るよ。ほら起きて」
「わ!」
手を引っ張られ、身体を起こされる。
思わず身を硬くすると、息がかかるくらい顔を近づけられた。耳元で、
「ねえ、そう緊張しないでよ。まるで俺が無理やり連れ込んだみたいじゃない」
無理やりじゃないの? ねえ、違うの!?