第2章 二ヶ月目の戦い
誰が取ったのか聞きたいが時間が惜しい。
「じゃあ場所を移動しましょうか。監視カメラがなく、パトカーが入りにくい、でもいざというときは退路が確保出来るような場所。お金の受け取りは、そこらのお馬鹿な学生か、ホームレスの方にお願いし、確保されても上の名前が出ない
よう、こちらも偽名を使います。お金を受け取ったらすぐ町を出て――」
「い。いやいやいや……」
チビ太さんは完全に引いている。だがすでに戦いは始まっている。
一分一秒でも早く動かねば。
そのとき、猫の鳴き声がした。
屋台のそばに一匹の猫がいる。
「ん? 今日は残り物はやらねえぞ、今は忙しいんでい」
チビ太さんがしっしっと追い払う。
だが一匹が逃げるともう一匹来る。
「忙しいんですよ。あっち行って下さい」
私も追い払う。
「餌付けでもされてるんですか? よくないですよ?」
「いや、そんなにやってねえよ。それに、いつもはこんなに集まらねえのに」
首を傾げるチビ太さん。
猫は増え続けている。すでに十数匹。
けどエサをねだるでも、おでんを狙うでもなく、ただ集まっている。
「まだ集まってきてません?」
猫の鳴き声がする。また数匹が来た。何だか背筋が寒くなる。
「何か変だ。逃げようぜ」
「そうですね……ちょっと、どいて下さい、踏みますよ!!」
走ろうとすると、猫が妨害するように足下にまとわりつく。
くう、これでも先日まで猫だったのだ、本物の猫くらい!!
「どれだけ集まるんでい……」
チビ太さんが呆然とする。猫の数は、もう数えるのも怖い。
あ。
来た。
一番来て欲しくない人が。
「誘拐されている風には見えないけど?」
街灯のかすかな光の中に、陰鬱な目をした男が浮かび上がる。
ポケットに手を突っ込んだ青スーツ。猫背の四男。
猫たちが一斉に道を開ける。
「危ないことをするなって、何度言わせるつもり?」
一松さんが、殺意をこめた視線をまっすぐ私に向ける。
カツ、カツ……と靴音。いつものサンダルでは無いだけで怖い。