第1章 最初の一ヶ月
何を企んでいるのかと言われれば、元の世界に戻るまでの三ヶ月間、居候をしたく存じます。
――などと言えず、数歩後じさる。涙目になりかけたとき、
「止めろよ、一松。父さんと母さんが新しい妹だって認めたんだろ?」
と言ってくれたのは『おそ松』さんだ。すると一松さんがケッと横を向く。
おそ松さんはそれを見てため息をつき、私を安心させるように微笑んだ。
「俺たち、六つ子だから父さんと母さんにも間違えられちゃうんだ。
俺は長男のおそ松。この家で何か困ったことがあったら俺に言ってね」
「は、はい。ありがとうございます。あ、ご飯とお味噌汁、温めますね!」
慌てて台所に向かう。
全員に拒否反応を示されているわけではないと分かり、ホッとした。
「この歳で妹が、それも君みたいな可愛い妹が出来るなんて嬉しいよ。
ねえ、記念に一緒に飲みに行こう!」
トド松さんが私に並んでさわやかに仰る。
「いえいえ、未成年っすから」
あとナンパされてる気分。
そして眉毛の鋭い人が、こっちをチラ見しつつやたら鏡を見てるのは何なんだろう。
そこではたと思い出す。さっき新聞を見たけど、今日は平日だった。
「あの、皆さん、今日はお休みなんですか?」
すると目の焦点が若干合ってない人が、成人男性らしからぬテンションの高さで、大きく手を振る。
「えー? 俺たち、毎日お休みだよー!!」
「は?」
「……全員ゴミ。社会のクズだよ」
一松さんが、ギロリとこちらを睨んできた。
…………
「あーもう。忙しい忙しい!!」
午前中で終わるとかとんでもない。掃除って大変だ。
慣れない家で洗濯物を干し、掃除をし、昼食の用意までしなきゃいけない。
私の元々の家事スキルの乏しさと相まって、現場は悲惨を極めた。
もちろんル○バやクイック○ワイパーといった最先端の掃除機器もなく、ホウキ大活躍。
廊下は地道に雑巾で拭いていくしかない。
「……そこ、まだ汚れてるから」
そしてなぜついてくる、一松さんっ!!――ちなみにパジャマから紫色の松パーカーに着替えている。
ニャンコを抱いているのが腹立つしっ!!