第6章 切り捨てと救済
「嘘でしょ…」
「嘘だろ…」
イノと俺の声が被さる。
「…やはり無理でしたか。」
月光特上の悔しそうな声が俺に現実を突きつけた。
「おい、飛段。
リーダーから連絡だ。すぐ戻るぞ。」
ちょうどその時、暁がもめ出した。
リーダーに呼ばれて帰ることになったらしい。
逃がすわけには行かないが、正直今はその方がありがたい。
「女ぁ!次会ったら覚えとけよ!」
飛段が文句を吐きながら姿を消した。
辺りが静かになり、イノとチョウジの泣く声が聞こえてきた。
ゆらりとルミが立ち上がる。
そして……。
「まて!」
ルミはアスマの亡骸を抱えてその場から姿を消した。
「いったいどうなってやがんだ!」
アスマを助けてくれ用としたかと思えば、今度はその亡骸を持ち去る。
アスマは三代目火影の息子だ。
それは血継限界の者と同じように死体であろうと価値があるのかもしれない。
ルミがいったい何をしたいのか、敵なのか味方なのか分からなくなった。
(…いや、抜け忍なんだから敵なのか。)
俺は自嘲すると、その場にしゃがみこんだ。
「ちくしょォォォッ!」
地面に拳を振り下ろして力の限りで叫ぶ。
アスマの綺麗な死に顔が頭から離れなかった。