第6章 切り捨てと救済
角都と戦っていた不知火特上が投げ飛ばされて俺とぶつかったのだと気付いた時には、飛段の胸を刀が貫いていた。
「アスマぁ!」
俺は悲鳴を上げてアスマに駆け寄ろうとした。
その時、一陣の風が吹いた。
「なっ!?」
目の前を通りすぎた黒は、アスマの傍らにひざま付いて瞬時に結界をはった。
「ルミ!どういうつもりだ!」
始めて見た人物だったが、それがルミだと俺は確信をもってそう言った。
「うそ、ルミなの?」
イノは目を見開いてこちらを見ている。
「アスマをどうするつもりだ!」
俺は返事を返さないルミを睨み付ける。
しかし、彼女は反応することはなくアスマの体を上から下まで確認するように見る。
その瞬間、空気が変わった。
彼女の瞳が紅く変わったのを見て、やはりルミだと確信する。
ルミはアスマの体に手をかざした。
「あれは、医療忍術?」
光だした手に驚いていると、横から声がした。
月光特上がルミを見て眉を寄せていた。
「おいおい!
またあの女かよ!」
聞こえてきた声に視線をやると、飛段と角都が並んでルミを見ていた。
幸いこちらにすく攻撃を仕掛けてくる気配はない。
アスマに視線を戻すと、傷が塞がっていっていた。
「…どうなってんだ?
それより、心臓をやられたら並みの医療忍術じゃ助からねえぞ。」
不知火特上は抜け忍であるルミがアスマを助けようとしているのを信じられないように見ていた。
(頼む、アスマを助けてくれ!)
俺はさっきまでルミを警戒していたことを忘れて祈っていた。
その時ふと、ルミが目を見開いた。
かざした手がわずかに震える。
そして、光が徐々に消えていった。
『っ、………くそぉぉぉッ!』
暁さえも黙り静かなこの場所にルミの慟哭が響き渡った。