第6章 切り捨てと救済
sideールミー
瞬身の術で距離を一気に詰めてアスマのもとへ立つと、すでに彼は心臓を貫かれたあとだった
私は邪魔が入らないように結界をはるとアスマの傍らにしゃがんだ。
そのまま、万華鏡写輪眼になりオホゲツを発動させる。
(良かった。
これならオホゲツで十分だ。)
私は歌遁を使わなくてもすむ怪我で安堵した。
とは言え心臓をやられている。
シカマルが何か言っているがそれを無視して治療を始めた。
そして、徐々に傷が塞がっていく様子が体内まで写輪眼に映る。
(良かった…)
ほっと息を吐き出そうとしたときだった。
脳裏にイタチの姿が浮かんだ。
続いて干柿鬼鮫。
目まぐるしく先頭場面が繰り広げられたあと、鬼鮫が赤い髪の老人を担いでいる後ろ姿、そして真っ赤な瞳のなかに回転する黒が映り情報が流れ込んできた。
これは、4尾を見捨てることが出来ずに送った影分身が消されたことを意味していた。
そして4尾の人柱力がこれから死んでしまうことも。
(違う…見捨てることが出来なかったなんて嘘だ。
影分身で暁とやりあうことが出来るわけ無いじゃん。
アスマのとこに私が来た時点でもう見捨ててたんだ。
影分身を送ったのは、助けるつもりで頑張ったって思いたかっただけなんだ…)
繋がりがあるアスマと会ったこともない四尾の人柱力。
私はその二人の命を天秤にかけ、片方を選び、片方を見捨てたのだ。
『っ…くそぉぉぉ!』
やるせなさに悲鳴を上げた。
それでもアスマの治療をなんとか終えて立ち上がった。
周囲を確認すると、暁はいないが十班の同期たちと特別上忍の二人が満身創痍でこちらを見ていた。
(あんな怪我人に意識のないアスマを連れて帰らせるのも大変かな。)
何より、治療したとはいえ心臓をやられたのだから早く木ノ葉に連れ帰って安静にさせた方が良いだろう。
(仕方ない。
私がは運んだほうが速いかな。)
私はアスマを抱えると木ノ葉に向かった。
私は背負っているアスマに殆ど体を覆い隠されていた。