第5章 迷い
「玉葱買って来ましたけど…
これはどういう事です?」
しかし、その空気は一瞬にして壊れた。
「…君麻呂………」
カブトが呆れたような、なんとも言えない表情で君麻呂を見る。
「ありがとう。君麻呂。
ルミちゃん、今日はカレーを作ってちょうだい。」
どうやら、大蛇丸のお使いだったようで大蛇丸が君麻呂に礼を言う。
(…この人たち、一応敵の前だってこと解ってんのかな?)
私はため息をつきながらも頷いた。
『…ナルト、サクラ、もう私の事は放っておいて。
行こうか、大蛇丸さん。』
君麻呂の登場で緩んだ空気の中、未だに立ち尽くしているナルトたちに向き直る。
「「「ルミっ‼兄さんッ!!」」」
ドロンと煙に包まれる瞬間、テンゾウを除いた三人の声が聞こえた。
(…………ん?
兄さん?)
何だか一つ違う単語が混ざっていたような気がする。
『………。』
大蛇丸の術で新しいアジトに着いた瞬間、君麻呂を見上げる。
『………兄さん?』
「君の兄になった覚えはない。
まさか、サイがいるとは…。
…血は繋がっていないけど、弟だ。」
まさかの君麻呂の答えに、私はどうリアクションを取っていいのかわからなくなった。
大蛇丸だけが楽しそうな笑みを浮かべていた。
それから数時間後、大蛇丸のリクエストで私はカレーを作っていた。
今日は辛口だ。
私はカレーは甘口が好きだが大蛇丸は違うようだ。
(…そう言えば、ナルトとサクラ、すごく必死だった。)
カレーの材料を切りながら、昼間のことを思い出す。
サスケの代わりに自分が里を抜けた事で、未来でナルトたちが悲しむ事は減ったはずだ。
何しろ、私は極秘任務についただけで里を抜けたわけではない。
(でも、今は凄く辛い思いをさせてたんだな…。)
誰も悲しくないように、辛いことがないように。
そうなれば良いと思って行動しているのに、上手くいかない。
『本当にこれで良かったのかな?』
思わず迷いが口をついた。