第11章 兄弟の絆
「俺は、兄さんともう一度木の葉の里で一緒に暮らしたかった。
そのために、火影になろうとも思った。」
幻術の掛け合いの合間、サスケが口にしたその言葉に俺は驚きを隠せなかった。
憎まれていると思っていた。
憎まれるように仕向けていた。
それでもそんなことを考えてくれていたことが嬉しかった。
「兄さんに俺は殺せない。」
呟く様に言ったことは間違いではなかった。
気づかれていたのかと嬉しいような複雑な気持ちになる。
「だから、俺が殺すしかないんだな…」
続けられた言葉は俺に向けられたものではなかった。
覚えのある表情に目を見開く。
「また背負わせる事になるってことは分かってる…
ごめんな、兄さん。」
あの日のシスイさんと目の前のサスケの表情が重なった。
「俺は兄さんを殺すくらいなら、俺自身を殺す」
「サスケぇッ!」
俺は自分の両目に指を突き立てた弟に悲鳴をあげて駆け寄った。
「サスケっ!何故だ‼」
血を流す弟に駆け寄る。
痛みを耐え地に膝をつくサスケがバランスを崩さないよう支えた。
「兄さんにオレが殺せないように、オレにも兄さんは殺せない。」
サスケは見えていないはずなのにしっかり俺の方を向いてそう言うと手を差し出した。
「その目が見えなくなってしまうのを補えるならオレの目を使えばいい。
オレは、兄さんを通して世界を見るよ。」
そう言うとふらりと俺に倒れかかってきた。
「サスケ!」
ダンゾウの手下との戦闘のあとにこの傷だ。
早く治療しないとまずい。
(どうする?木の葉の里まで連れていくか?それとも暁…いや、そもそもそれまで持つのか!?)
柄にもなく焦りだしまともに思考回路が働かない。
『イタチさん!サスケ!?』
その時聞こえた懐かしい声は驚きの色を含んでいたが、俺には救いに聞こえた。