第1章 私は貴方に恋をした
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楓さんの本丸が揺らいだのを見た私は楓さんに何かあったのだと察知し
会いに言ったのは良いけど、汗びっしょりの状態で明かに大丈夫じゃない
しかも嘘まで付かれて…私の心の中の恐怖が頭のなかを過る
迎えに行くからと言われ、約束の時間までになっても来ず
好きな女が出来たというメールに、待ちぼうけのまま雨や雪に晒され泣いた日々
嘘は嫌
帰って来るからね、良い子にしてるんだよと頭を撫でられ
遺体となって帰ってきた両親。
先にある、独りぼっちの未来に涙が止まらなかった
弾かれる様に走って逃げた朱里は誰にも見つからない様に離れに入り
1人溢れる涙を拭っていた。
私は、楓さんに捨てられちゃうの?
また1人ぼっちになっちゃうの?
ふと小さな気配が離れに近付いてきて
「こんこーん、あるじさま、はいりますねぇ」
「え、いまつるちゃん!?まっ」
「まちませーん、だいじょうぶですよーぼくだけなんで」
カラカラと戸を開けて入って来た今剣
私の顔を見て片手に持ってた冷たい手拭いで目を覆ってくれた。
今剣ちゃんを抱き締めて、止まらない涙を流していると
「ひざまるさんが、かえでさんのとこにとっこーしていきましたよ」
「え、私誰にも喋ってないよ?」
「もう、あるじさまのれいりょくが、ゆらいだのにきづかないものはいません」
数珠丸も楓さんの本丸に乗り込んで行ったと聞いて青褪めた
悪いのはみんな私なのに。
「でも、かえでさん、たおれていたので。こちらのとうけんたちもさぽーとして、あかしさんのおてつだいをしてます」
「か、えでさんは?」
ぎゅうっと今剣に抱き締められて、あやすように背中を叩かれ
「いきてますよ、かろうじて」
なので会いに行って看病してあげて下さい。
かろうじて?あの後何があったのか。私のせい?
皆、私のせいで居なくなっちゃうのは嫌だ。