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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


真っ直ぐに執務室に向かっていると、途中の廊下で数珠丸に会った。

「数珠丸、邪魔してる」
「いらっしゃい。朱里なら執務室で今から休憩ですよ」
「ああ、菓子作ったから持ってきたんだが、丁度良かったな」
「おや……では、お茶を追加してお持ちしましょう」
「頼む。あ、そうだ。刀剣たちの分はここの薬研と俺んとこの明石が配ってるかなんかしてると思う」
「わかりました。そちらも確認しておきます」

静かに頷いた数珠丸に、先に執務室に行っていると告げて分かれると楓は少しして目的地についた。
いつも通りコンコンと柱をノックしてから顔を出せば、音に顔を上げた朱里が楓を見て嬉しそうに笑う。
楓も釣られるように常とは違う朱里にだけ見せる笑みを浮かべると、籠の中身をちらりと確認してから中に入る。

「こんにちは、楓さん。どうしたの?」
「貰った苺を加工したんだが結構な量だったんで、消費出来る分以外菓子にしておすそ分け」
「わっ、嬉しい!」
「執務は切りが付いたのか?」
「うん、今終わったよ。ね、膝丸!」
「ああ……今日の分は今ので終わった」

喜ぶ朱里に文句はないらしく、執務を手伝っていたらしい膝丸が頷くと書類は片付けられ空いたテーブルに楓が籠を置く。
中にはイチゴジャムを乗せた一口サイズのタルトやクッキー、ジャムを練り込んだパウンドケーキにぷっくりと膨らんだクッキーもある。
朱里は目を輝かせてどれから食べようかと早速物色し始めた。

「これ、この可愛いの何?」
「フォーチュンクッキーの応用で、中に紙の代わりにジャムが入ってるただのクッキー」
「へぇ……!」

可愛い! そう言いながらにこにこと眺めている朱里を見て、楓はそのクッキーを一つ取ると朱里の口元にちょんっと触れさせる。
反射的にぱっと口が開いて、その中に放り込むと目を瞬かせた朱里は大人しくもぐもぐと咀嚼する。

「どうだ?」
「ん、甘すぎなくてすっごい美味しい!」
「なら良かった。来る途中で行き会った数珠丸にも言ったらお茶持ってきてくれるって言ってたから、好きなだけ食べるといい」
「わっ、やった!」
「朱里! 食べ過ぎはっ……」
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