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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


明石は言われたメンバーを呼びに本丸の刀剣たちが集まる部屋や彼らの私室を探しに執務室を出ていく。
暫くして先に戻ってきた明石が楓の手首を見て首を傾げた。

「主はん、アレは着けていかへんのです?」
「ああ、朱里に会うならバレる可能性は全部避けたいから」
「なるほど……まぁ、せやけど、ほどほどにしはった方がええかもですよ。あのお嬢はん、嘘とか嫌いっぽいやないですか」
「まあなぁ……内緒にしてると拗ねるかなぁ……」

危険は避ける、という楓に明石が苦笑しながらもやんわりと指摘する。楓の方もその可能性は分かっていると頷きながらも、やはり驚く表情も見たいとも思い、もししらを切ったらと考えて僅か遠い目をする。
最悪嫌いと言われることも覚悟しよう、そんなことを考えて小さくため息を落とすと丁度良く集まってきた刀剣たちとゲートに向かう。
明石以外は楓がどちらの姿であっても大体動じない。明石も本丸に来たばかりの頃は動じなかったが、やる気がないからと仕事をサボるたびに呉羽の姿でお仕置きをされていたため、今では呉羽の姿だと若干引き気味になるのは余談である。
ゲートを抜けて演練の施設に入ると、少し前に見慣れた後ろ姿が見えた。

「朱里」
「えっ? く、呉羽さんっ?!」
「あらあら、凄い驚き様ね。今日の演練相手のリスト、見たんじゃないの?」

少しだけ速い足取りでその背に近づき名前を呼ぶと、ピタリと足を止めた後ろ姿が勢いよく振り返って驚きに声を上げる。
目を一杯に見開いて、名前を呼びながらなんで、どうして? とわたわたしている姿をクスクスと笑いながら、呉羽の姿で楓は相手との距離をあと一歩縮めて指をのばす。
相手の顎下を擽りながら視線を上げさせ、絡めた視線は自覚できる程にとろりと溶けた。
からかうように言えば、ぷぅっと頬を膨らますその顔も可愛らしく、楓は目の前の相手、朱里にふふっと笑みを零して頬にちゅっと軽い口付けを送る。
もちろん、周囲にカメラも人の気配もないのを確認しての所業ではあるが、ぐっと着ていたパーカーのフードを引っ張られてしぶしぶ振り返ると不機嫌そうな膝丸が居た。

「呉羽殿……」
「あら、これくらいなら挨拶よ? ね、朱里」
「ふぇ? あ、はい。海外の方は頬にキスしますから」
「……朱里」
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