• テキストサイズ

私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


24

本日の執務の最中、演練に行こうと予定表を見た楓はそこに並んだ名前の一つに目を留めて声を漏らす。

「珍しい……」
「どないしはったんです?」
「ん? ああ、いや。演練で朱里も一緒みたいだから」
「は?」

今日のメンバーを確認しに来た近侍の明石に声を掛けられ我に返った楓は、演練相手の予定表を明石に差し出しながら答える。
明石の方も予想外だったのか間の抜けた表情と声を零しながら差し出された予定表を受け取り、名前を確認すれば確かに朱里の名前があってはぁ……と声を漏らす。
楓はそんな明石をほっといて演練に向かう準備のために私室に向かう。外で男の顔を晒すことはしないと決めてから、本丸を持ってもそれを通しているため女装をし、呉羽として演練に向かうのだ。
自室に入って衣装を確認しながらふと、最近購入したものを見る。朱里の私服がとあるジャンルだと知って合わせるために男女それぞれに何着か購入したのだ。

「んー……タイミング合うかわかんねぇけど、会えたらラッキーと思って着ていくか」

購入しているそれから女性用の物をいくつか取り出し、準備を整えると化粧は凝らずにほどほどで執務室に戻る。
その恰好を見た明石がまた絶句するのを相変わらずの調子で楓はスルーする。

「えーっと、どうしようかな。今日はとりあえず、一軍で行くか。日課の報酬欲しいし……まぁ、相手のレベル次第だけど」
「はぁ……相変わらず、なんて言ったらええか……化けっぷり……」
「ん? 明石、無駄口叩いてないで仕事」
「へいへい……んじゃ、俺と、宗近はんと、あとは?」
「長谷部、太郎、次郎、それに青江」
「りょーかい。んじゃ、呼んできます」
「おう」

楓に無視された明石は、深いため息と共にぼそりと呟きつつ自分を取り戻すとそれが聞こえた楓の言葉にやる気のない返事を返す。
とはいえ、数年共にしているのでやる気がなくても仕事はやることを叩き込まれている。
楓はそれなりに気を抜いているが、必要最低限やらなければいけないことはかっちりとやるタイプなのだ。
時々非常に凝り性で、しかも根本は完璧主義。それゆえに、本気でのめり込むと際限がないという自覚により常に気を抜いている状態である。
/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp